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姫日記

恋する気持ちを持ち続けていたい姫の日記です。

(2012年6月7日付の記事)

大きな総合病院の正面玄関を入り、キョロキョロする。
バッグの中で携帯が光ったので出ると、ひろからで
まっすぐ進んで売店のほうに来きてくれとのこと。

どんな様子か不安で、そして姫はどんな態度をすればいいのか。

しばらくしてカラコロと点滴のポールを引きずってひろが現れた。
「情けないだろ・・・」
病衣姿のひろは一回り小さく見えた。
げっそりと目が落ち窪んでいる。

「心配だった?」
「心配だったよ。死んじゃったかもしれないって。」
「僕も。死んじゃうかもって思った。君、涙ポロポロって。」
「うん。どうしていいか分かんなくて、お店に行くしかないって。」
「35、6歳の女の人が来て、涙ポロポロ流してって言うから。」
ひろの妹さんが告げたのだろう。

「アハハ・・・」
「歳は違うけどなって。35、6歳だって!!」
「姫だと思った?」
「思ったよ。」
「そんなの分かんないじゃない!他の人かも。」
「お前しかいない・・・」

思っていた以上にひろは元気だった。
元気なフリをしているのかもしれないけれど。

「もう痛いとかないの?」
「今はないよ。腹減った。」
「ばか!」
「トンカツとトンテキを一緒に食いたい。」
「もう、バカだ!」
他愛ない話をした。

そして、ひろが倒れて吐血した時の状況を説明してくれた。
救急車の中での大量の吐血はそれはそれは凄まじかったらしい。
ひろの甥っ子はレスキューなので、情報が入ったようだ。
「あの大量出血で死ぬ人もいますから、って医者に脅された。
葬式に行ってて良かった。あれが店の2階なら、僕、死んでたね。
今はずいぶん良くなったけれど・・・」

そう言ってひろは指を姫に見せた。
手のひら、特に指先は血の気が全くない。
青白い指だった

「どうして?何で?」
「血圧が下がってるからだ。もっとひどかったよ。だいぶ戻った。」

そして明日の検査のこと、今分かっていることを姫に詳しく
話して聞かせてくれた。

「メソメソしないね?大丈夫だね?何の情報もないと不安だけど
もう、安心しただろう。」
「うん・・・死んじゃわない?」
「死んじゃわないさ。」
「死なないで。」
「死なない。死ねないよ。」

ひろは姫の頭を優しく包むように撫でた。

「僕から連絡したのは君だけだよ。唯一。
あとは全部救急隊だから。偉い?」
「ありがとう。嬉しい。」
「そういうわけで、連絡したくても出来なかったんだ。
しばらく待って。10日くらい。待てるね?
電話出来る時はするから。
だから、君はいつも僕と居て出来ないことをやりなさい。」

「そんなのないもん・・・」
「ないのか?」
「あ、あの人と、あの人と、あの人とデートするくらいかな。」
「何だ、3人か寂しい奴だなぁ。」
「今のは例だから。もっといっぱいいる!」


さぁ、と立ち上がったひろの肩は
すっかり丸みがなくなり骨ばっていた。
そんなひろの肩に後ろからそっと触れる。
「痩せただろ。」
「つまんない。」
「だろ?これからは食べたいものを我慢せず食べる!」
「バカ!」

エレベータが閉まる寸前、寂しげな顔をした姫に
ひろは同じように寂しげな顔で投げキッスをくれた。
口角をほんの少し上げて、手を挙げることしか姫には出来なかった。
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