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姫日記

恋する気持ちを持ち続けていたい姫の日記です。

姪っ子のことは、Nちゃんにも相談した。
父が言ったという「病気を知るのは不幸」の
言葉に、自分の考えが揺らいだからだ。

Nちゃんは言った。
「お父さんは昔の人だから…そう思うのは
仕方ないのかもね。でもさ、事実を伏せたところで、その事実が消えるわけじゃないし。
自分の身体のこと、知っているべきだよね。」


私もそう思う。
もし、私が同じ立場なら、絶対に検査を受ける。


Nちゃんは言った。
「彼にも知らせるべきだし、知る権利があるよね。
それでもし、オレには無理だ、抱えきれないって
なったら、姪っ子ちゃんには可哀想だけど、
誰も責められないよね。
それに、そのことを抱えきれないような男なら、
そもそも無理だろうし。他にオレが守ってやる、
って男が絶対にいるだろうし。
男なら愛する人を守るって、言ってみろ、って
思うよ。」




そうだよね…


もし、私がそうだったらどうする?
そう尋ねたかったけれど、なんだか、
尋ねることはできなかった。

尋ねたって、どうしようもないことだしね。
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今度の土曜日、私は姪っ子に会いに行く。
高速で3時間、クルマを飛ばして会いに行く。

姪は今、24歳になるのか…
兄の娘で、私は一時期、彼女と一緒に
暮らしてもいた。
極小未熟児、1900グラムほどで生まれた
彼女は、とても可愛くて、愛おしくて、
自分が妊娠した時は、彼女より可愛いと
思えるだろうかとも思ったほどだ。

兄家族は複雑で、兄は姪の母親とは離婚し、
まぁ、一家離散の状態だ。
私は兄とは絶縁している。
兄には二人の娘がいるが、その子らは、
親から捨てられたも同然で育った。

私が会いに行くのは、長女のほうで、
実は結婚の話が持ち上がっている。

詳細を書くのは憚られるので、割愛するが、
兄の別れた奥さんは、育児放棄甚だしく、
二人目の娘を産んでしばらくして、
遺伝性の病気があることが分かった。
将来的に身体に不自由をきたし、
介護が必要な身になるだろう。

しかし、当時、兄や、育児放棄の嫁に代わって
姪たちの面倒をみていた父がくだしたのは、
姪たちに病気を告げないということだった。
「病気が分かったところで、治るわけじゃない。
そんなことを抱えて生きていくのは酷過ぎる。」
と。

私も妹も、反対した。
「え?それって間違ってる!」と。

しかし、当時はそれほど深刻には受け止めて
いなかった。
日常に追われていたし、そもそも姪たちのことは、
その時点では、兄夫婦の保護の元にあったから。

時が流れて、姪たちは、自分の母親の病気を
知らずに育った。
自分たちに遺伝の要素があるということも
知らない。

実際に病院で話を聞いているのは当時の兄夫婦だ。
私も妹も、その深刻さやリスクを知らない。
ただ「遺伝性の病気」としか知識がない。

姪は大学に入ってすぐ交際した10歳ほど歳上の
彼氏と半同棲をはじめ、今は完全に同棲している。
付き合って5年ほどになるのか…

彼の両親が、なかば保護者代わりの私の妹に
「会いたい」と申し出た。
ぼんやりと結婚の話が出て、そして尋ねたという。
「彼女のお母さんって、どういう病気?」と。

それで、妹は言葉を濁したらしいが、彼の母親は
「ひょっとして◯◯?」と、病名を口にした。



それから、私と妹は、きちんと姪に病気のことを話す、遺伝子の検査を受けさせる、という結論を出した。

メールや電話で済ませる話じゃない。
それで、私は姪に会いに行くのだ。
そこで、彼女に話す。

日曜日には彼氏にも時間を作ってもらうよう
頼んでいる。

正直どうなるか、分からない。

遺伝のリスクがどれほどあるかも、
検査を受けないことには分からないだろう。
それ次第では、姪は妊娠出産を諦めざるをえない
可能性もあるかもしれない。
そもそも、彼氏が結婚を躊躇するかもしれない。
彼が受け入れても彼の両親が拒絶するかもしれない。


そんなやりとりをしばらくしていたら、
父、つまり、姪にとっては祖父、私は兄同様、
この父とも絶遠しているが、
その父が妹に言ったという。
「何で、病気のことを話すんだ!結婚がダメに
なるかもしれないじゃないか!黙ってればいい。
知ったら不幸になる。」
と。



色々な考え方があるだろう。
しかし、私は、姪には姪の身体を自分で守り、
管理し、自分の人生を決断する義務と責任があると
思っている。
まだ24歳の彼女には酷な運命かもしれないけれど、
黙っていることが幸せとは思わない。
黙って結婚することが彼女と彼氏の幸せだとは、
決して思わない。


だから、私は姪に会いに行く。
そして、彼氏に尋ねる。
「彼女を守る意志があるか?」と。
「彼女と人生を歩む強い気持ちがあるか?」と。
Nちゃんとこんなやり取りをした。



「姫ちゃ~ん、愛してるよ。」

「どのくらい?」

「姫ちゃんの旦那さんになりたいくらい!」

「ほんとかなぁ…」

「うん、ホントだよ。」

「じゃあ、なって。」

「うん(*^_^*)」

「ほんとかなぁ…」

「うん。」

「だといいけど…」

「姫ちゃん、愛してるよ。」

「ありがとう、Nちゃん。私も。」

「どのくらい?」

「Nちゃんの奥さんになりたいくらい。」

「じゃあ、なって!」

「じゃあ、むかえにきて。」

「うん、迎えに行くよ。」

「ほんとのほんとに?」

「うん。」

「ありがとう、Nちゃん。」

「ありがとう、姫ちゃん。
ずっとオレの手を離さないで。ずっと一緒だよ。」





嬉しくて、嬉しくて、届いたメールを
何度も何度も見返した。

これは絵空事?
これはヤクソク?


先のことは誰にも分からない。

全く実現性のないことを言うわけはない …
そう自分に言い聞かせながら、
静かなため息を一つ。
土曜日のお弁当への道のりは、
まぁ、それなりに大変だった。

料理は不得意ではないが、お弁当は難しい。
煮汁が出るものは避けなきゃいけないし、
彩りも考えながら、詰めるのもテクニックが要る。

でも、そういうことは諦めた。
だって、主役は”春の味がするたけのこご飯”だから。


金曜日、仕事帰りにたけのこを買う。
本当は農産物の直売所みたいなところで買うのが
一番いいのだろうが、そんな時間もなく、
オフィスにほど近いデパ地下の青果売り場で
小ぶりの、そして高めのたけのこを買った。
一応、地元産だ。

帰宅してからが、さぁ、大変。
その日の夕食を作りながら、
たけのこの皮をあらかたむき、
米ぬかとともに鍋でゆがく。

Nちゃんは「土曜日でお願いします」と
言ったきり、何もふれないし、
私もその後、何かを言うことはなかったので、
明日でいいんだよな・・・と
少し気になったので、遠回しに伝えるべく、
鍋でゆがく様子を写真に撮って、メールした。

「タケノコだぁ!楽しみ、楽しみ。」
彼からの返信に、一安心。


おにぎりを入れるパック、おかずを入れるパック類を
その後、買いに出掛け、万端整えて、土曜日の朝を迎えた。

土曜日の朝、鍋のたけのこを水洗いしながら、
皮をむき、縦半分に切る。

コトコトと煮ながら、玉子焼き、お肉の準備。
たけのこが煮上がったら、ごはん用に刻んで、
煮汁を冷やし、炊飯器に投入。

もろもろ、出来上がったのは、
待ち合わせ時間の30分前。

小さな紙袋を下げて、
私は彼の車の助手席に座った。


「せっかくだから、どこか公園に行って食べよう!」

車を少し走らせ、
郊外の静かな山里の公園に向かった。

広場にベンチとテーブルを見つけ、
そこで、お弁当を広げた。

「すごいね。姫ちゃん、ありがとう。」
「うん。お口に合うかどうか分かんないけど。」

「卵焼き、上手だね。きれい。」
「そう?」
「オレはこんなにうまく作れない。」
「アハハ・・・」

「どう?美 味しい?」
「うん、美味しいよ。めっちゃ美味しい。」

「おにぎりは?」
「すごく美味しいよ。」
「良かったぁ~」



大役を終えて、私はどっと疲れた。
バイバイをして、夜、彼から、メールが届いた。


「姫ちゃん、今日はごちそうさま。
すごく美味しかったし、姫ちゃんがオレのために
作ってくれて、本当に嬉しかったよ。幸せだった。」


たけのこが旬を迎えている。
息子たちは小さい時からたけのこが好きなせいか、
いつのころからか、私は毎年この時期になると
たけのこを煮ることが習慣になった。

それまではたけのこなんて、好きでもなかったし、
ましてや料理をするなんてこともなく、
米ぬかをあく抜きに使うことも知らずにいた。

都会で育った私は、当然身近に生のたけのこはない。
けれども、今、いるところは、農産物の直売所に行けば、
朝採りのたけのこが並んでいるし、誰かにもらうこともある。
だから、いつの間にか、料理をする方法も覚えた。

先週、Nちゃんと山あいの里にドライブに行った時
大きなたけのこが売られていた。
そこでは買わずにいたが、息子たちに旬のたけのこを
食べさせたくて、デートの帰り、近所のスーパーで
朝採りのたけのこを買って帰った。

薄味の煮物と、たけのこご飯を作ると、
息子たちはあっという間に平らげた。
私はたけのこを美味しいと感じたことはなかったのに、
その時は「あぁ、春の味がするな」と、その美味しさに
少し感動した。

旬のものはやっぱり美味しいものだ。

その夜、Nちゃんに
「今日、たけのこを煮たよ。春の味がした。」
と、メールを送ると、

「たけのこ買ったんだね」と、彼。
一緒にいた時に、私が買うのを迷っていたから。


「たけのこご飯も作ったんだよ。すごく美味しくできた。
Nちゃんにも食べてもらいたかったな。」

春の味のするたけのこご飯を食べながら、
思ったことを彼に伝えた。
Nちゃんは”おいしい”と言ってくれるだろうか。

「食べたいなぁ~」
彼から、そう返信があったので、
ふと思ったことを返した。

「あ!今度、たけのこご飯の
おにぎり作ってあげよっか?」

「やったぁ!来週の土曜日にお願いします。」

Nちゃんから、日も指定された。


と、なると、さすがにおにぎりだけというわけにも
いかず、ほかに何が食べたいか尋ねると、
”姫ちゃんの卵焼き”と、彼は答えた。




だから、先週は、色々と手筈を整えるのが
大変だった。
せっかくの機会だもの・・・
とは、思うけれど、なかなかこれが、面倒なんだな。

それで、思案した挙句、
・たけのこご飯のおにぎり
・卵焼き
・いんげんの胡麻和え
・豚ヒレ肉の柔らか焼き

に決めた。

豚ヒレ肉は木曜日に購入。
塊のまま、グラニュー糖と塩コショウをまぶし、
キッチンペーパーで覆い、ラップでくるむ。
こうするとしっかりと味がしみ込んで、
お弁当にぴったりのおかずになるのだ。

もう、これ以上ほかに、思いつかず、
また、これが面倒の限界でもあったから・・・
Nちゃんはパンストフェチだ。
私がストッキングを履いていると、
必ず、そっと撫で上げるように触る。
「そんなに好き?」

「うん、ダメ?気持ちいいじゃん。」


金曜日の夜の戯れは、
そんなところから始まった。

仕事帰りだった私は、スリットの入った
ロングスカートにパンストを履いていた。
センターに深く入ったスリットよりも、
Nちゃんが反応を示したのは、
やっぱりストッキングだった。

ソファに座った彼は、目の前に私を立たると
スカートを捲り上げ、ストッキング越しに
両手でそっと脚を撫でた。
「好きだねぇ?」

「問題ある?」

「ぜんぜん。」

そして、今度は私のふくらはぎを膝に抱えるように
隣に座らせて、頬ずりした。
「すごくやらしい感じ。」

匂いまで嗅ごうとするので、
私はイヤイヤと立ち上がり、阻む彼の手を
ほどいて、無理やりパンストを脱ぎ捨てた。

「何で~!」
「だって、嫌だもん。」
「いいじゃん!」
「嫌なの。」



「お風呂入ろっか」
全裸になって、バスルームに行こうとしたら、
くるりと彼は向き直って、私をきつく抱きしめた。
下腹部には硬いものが当たる。

Nちゃんもきっと、私と同じように、
こうして確かめ合いたかったんだろう。
言葉は何も必要なかった。
愛してるも、大好きも、体の密着には
かなわない。


彼の脇から手を差し込み、肩にしがみつく。
こうすると、肩を覆う厚い筋肉を感じられる。
「Nちゃん…」

触りたくても触れない一人の時を思い出して、
もう一度ギュッと肩をつかむ。
手のひらに収まりきらない、厚く大 きい肩が
私は大好きだ。


私は、Nちゃんの脚の間に顔を埋め、
硬くなったそれを口に含んだ。
ゆっくり吸い付くように上下させると、
「あぁ…気持ちいい…」
声にならないため息が漏れる。

私が好きなこの声を聞きたくて、
何度も、繰り返す。

そっと目を開けて、見上げると、
Nちゃんはとろんとした目で私を見た。

「気持ちいい?」
「うん。」
「すごく?」
「うん。すごく。」
「動かなくていいし、ラクチンだし?」
「うん。」
「こんなラクなことはない、もっとして、って思う?」
「うん、思う。」

それで、私は再び、深く含んだ。


しばらくして、今度は、Nちゃんが私を攻めた。
両手をグイッと広げさせ、ゆっくり舌を這わせる。
脇の下も二の腕も、指先も全身。
熱い芯の部分には全く触れずに、とにかく
全身に舌を這わせた。

足の指まで一本一本口に含み、
ゆっくりと私を見つめる。

たまらず、彼を引き寄せるが、
力づくで押さえられ、その行為が続いた。

全身くまなく彼の唇が這ったあと、
ようやく、脚を割って深く入ってきた。
私の脚を高く持ち上げるので、奥まで達する。
生理前で敏感になっているからか、
鈍い痛みを感じた。

私はもう汗だくだった。
見かねたNちゃんは何度もバスタオルで
私の汗をぬぐう。


ひとしきり突き上げて、唐突に
Nちゃんはドサッと仰向けに寝転んだ。
「おじちゃん、疲れちゃったの?」
「…ふぅ…ちょっと休憩…」

満ち足りた表情で目をつぶるNちゃんの胸に
私は頬を当てた。
ドクンドクンと早く強い脈動を感じながら、
私も目をつぶった。



しばらくして、私はNちゃんに跨り、
腰を沈めた。
私が絶頂に達しそうになると、
Nちゃんは私の手を取り、ぎゅっと支える。
その姿はまるで、檻にしがみつく動物のよう。

そんなことを何度も繰り返して、
最後は、やっぱりNちゃんが私を組み敷いて
激しく動き、耳元で熱い吐息とともに
「あぁ…姫ちゃん…イクよ…」と、果てた。


放心状態の私から、離れると、
溢れだす体液を拭いながら、Nちゃんが言った。
「やっぱり血が出てきたね。」

体液に薄まってピンク色に染まった
ティッシュを「ほら」と、広げた。


「ほんとだ。予想通りでしょ。」
「そうだね。」
「良かった…」
「そうだね、今日で良かったね。」






翌朝、鈍痛で目が覚めて
トイレに行くと、真っ赤な血液が流れだした。


「おはよう、姫ちゃん。」
いつものメールに、

「おはよう。私は血だらけだよ。
刺激を与えたからかもしれないけどね。」

「オレの凶器のせい?」

「アハハ…そうだね。」
Nちゃんと一日でも早く逢いたかった。
逢って、お互いを確かめ合いたかった。

…って、そんなことNちゃんは思っているだろうか。

だから、私は木曜日の夜、こう切り出した。
「土曜日も逢いたいけど、明日の夜も逢いた~い!」

”無理、ダメ”を覚悟の上だ。
前々日に、「土曜日デートしよう」と言われていたし、
きっと「土曜日に逢えるからいいじゃん」と、
返されるかと思っていた。

すると、
「うん、逢いたいね」と返信があった。

そして、私は
「うん。で、しよう! 生理が始まりそうだから。
始まらなければ。」
と、送った。


私の月経の周期は正確で、この感じだと、
土曜日か日曜日、早まれば金曜日かもと
踏んでいた。

Nちゃんとの交わりは2週に一度で、
土曜日のデートがそうなるだろうけれど、
生理と重なる可能性が高かった。
ならば、生理が始まるギリギリの金曜日の夜
という策もあるんじゃなかろうか。
私はそう考えたのだった。

とにかく、私はNちゃんとしたかった。


「はぁい(*^_^*)」
彼はあっさりとこう返信した。



金曜日の朝、
「おはよ う、姫ちゃん。今夜は何時ごろなら
待ち合わせできますか?」

平日の夜、Nちゃんと交わったのは、
これまでに一度だけ。
もう一年以上も前のことだ。

待ち合わせのコーヒーショップの駐車場で
午後7時半、私が彼の車に乗ると、
何も言わずに車を発進させた。


いつもと違う、街の中のホテル。
仕事帰りに待ち合わせなのか、駐車場には
スーツ姿の男性が見えた。
遅れて妙齢の女性の姿…

ただならぬ関係か…

金曜日の夜、空いている部屋は残り3室。


シックで洗練されたシティホテルのような部屋で、
私は Nちゃんと抱き合った。

仕事モードの私の服を捲り上げて、
ストッキングを履いた脚を撫でる彼。

バスルームは眩しいくらいに明るく、
ほんの数時間前まで仕事をしていたことを
考えると、余計に隠微な気持ちになった。

「今日は意地悪じゃないでしょ?」
ベッドでNちゃんが言った。

「もうっ。絶対意地悪しちゃダメだからね!」

「しないよ。するわけがない。」

「でも、したもん。」

「だから、それは、姫ちゃんが
『誰かとデートする』とか言うからでしょ。」

「だからって、意地悪しなくても。」

「ほんと、カチンときたの。
『コイツ、何でそんなこと言うのかな』って。
だから、そんなつもりはなかったんだけど、
きっと深層心理が働いて攻撃的になったんだよ。」

「それって深層心理じゃないよね。
表層心理だよね?」

「でもさ、元はと言えば、姫ちゃんが
『誰かとデートする』とか言うから。」

「しないし。」

「でも、言ったでしょ。」

「もう言わない。」

「絶対?」

「思っても言わない。思わないし、言わない。」

「あ~!今、言っちゃったね…」



「もう、この話はおしまい!」
Nちゃんがそう言って、私たちは戯れた。

「そっとしておいて」の言葉どおり、
翌日の月曜日はNちゃんから何のアクションもなかった。

私から連絡もしなかった。

そもそも私の不用意な発言のせいだし。
「そっとしておいて」のメールには、

「私が要らぬ一言を発したせい。
Nちゃんが悪いんじゃない。
でも、Nちゃんにとって私が必要か、
必要でないか考えてみて。」
そう付けて送ったのだった。


さぁ、私からアクションを起こすべきか、
どうすべきか。
このまま、静かに終わってしまうのか。
それも仕方がないか…

火曜日の朝、
いつもと同じ時間にメール着信があった。
「姫ちゃん、おはよう(*^_^*)」

そのあまりに何もなさに、彼の優しさを感じた。

その後も、「お昼だよ~」のメール。
夕方には「気を付けて帰るんだよ」と。

「お疲れさま。今から帰ります。」
と、返信すると、しばらくして電話が鳴った。

Nちゃんからだ。

出るのが一瞬ためらわれた。
何と言って出ればいいのだろう…


「姫ちゃん…大好きだよ。姫ちゃんは?」
「大好きだよ。」
「じゃあ、一緒だね!」
「うん…」
「姫ちゃん、ごめんね。」
「でも、何が意地悪か、攻撃的か分かんないんでしょ。」
「うーん…何となく。」
「じゃあ、いい。」
「分かってるよ。ごめんね。」
「ううん…寂しかった。」
「ごめんね。」

そして、ぽつりぽつりと他愛ない会話を交わして、
お互いの溝を埋めた。
「そっとしておいてください」のメールに、
彼からは
「わかりました。」と、一言返信があった。


私は、ショックだった。

私の不用意な一言が原因なのは
分かった。
私に非がある。

でも、だったら、シンプルに私を責めれば
いいじゃないか。

それを、攻撃的で意地悪な態度で示さなくても。

普段、穏やかを絵に描いたような
Nちゃんだからこそ、私はショックだった。
私を大きく包むでも、受け止めるでもなく、
ネガティブな態度で示すなんて。

何度も言う。
私に非があるのは分かっている。
だったら、それをストレートに責めれば
いいじゃないか。

あのNちゃんが…
私はとにかくショックだった。

私が「そっとしておいてほしい」と
メールを送る前に、
彼からは
「もう二度と攻撃的にも、
意地悪もしないから、どうか許して」
と、メールが送られてきた。

でも、彼は私を責めなかった。

「あんな言い方するなよ。
すごく嫌だったよ。」

そう言えばいいのに。



…そんなことを悶々と考え、
私はひとり静かにしていた。

翌日の月曜日、
Nちゃんからはいつもの「おはよう」の
メールもなく、とにかく一人で静かにしていた。
今は、もう落ち着いたのだけれど、
先週は色々と大変だった。
というのも…

先週の日曜日のこと。
朝、Nちゃんからメールが届いた。
「今日は12時に○○でいい?
お昼ご飯食べよう。ダメ?」

最後の”ダメ?”が引っかかる。
私が拒否するわけないのに…
それは彼自身の引っかかりを意味していた。

待ち合わせ場所で、彼の車の助手席に乗ると、
笑顔も見せず、彼はこう言った。
「姫ちゃん、何食べたい?」
「えーっと…うーん。何でも。」
「何でもじゃ、分からないでしょ。何が食べた いか言って。」
「Nちゃん、考えてないの?」
「考えてるよ。でも、姫ちゃんが食べたいものを食べよう。」

ここに笑顔は全くない。
むしろ半ば脅迫されるように、
まるで私は詰問されているようだった。
Nちゃんの目の奥に、優しさのひとかけらも
見つけることは出来なかったから。

この時点で、私は涙をグッとこらえた。
私に全く非が無かったら、
「今日はもうやめましょう。帰る。」
と言って、車を降りたことだろう。
実際、一瞬そうしようかとも思った。

でも、私は精一杯涙をこらえ、
「うーん、じゃあ、和食!」
と答え、そして車は発進した。

何なの?その不機嫌さ。
いつもなら、私が助手席に乗るや否や、
私をハグするときだってあるのに。
ハンドルを両手で握ったまま、
隣の私に手を伸ばしもしない。
口数も少なく、声のトーンも低い。

私が他愛もない話をしても、
まったく肯定せず、異を唱え、
ニコリともしない。
攻撃的で、意地悪が極まりなかった。

気のせいかな…
そう思って何度も確かめたけれど、
反応は終始同じで、私は打ちのめされて、
涙をこらえるのに必死だった。

食事中もそうだった。

まるで倦怠期の夫婦のように、
会話はほとんどなく、微笑み合うこともなく、
私の話には相変わらず異を唱えるばかり。

だから私は勇気を振りしぼって尋ねた。
「いつも大抵、私の言うことに同調しないけど、
今日はことのほか、同調しないし、
やたらと攻撃的だよね…」

「まさかぁ?」
ほんの少し、いつものNちゃんに戻って笑った。

「すごく攻撃的。」

「そんなことないよ。あるわけない。」


私の指摘で、きっとNちゃんは我に返ったんだろう。
そこからは、少し態度が軟化はした。
けれども、言葉の端々に攻撃性は残ったまま。



思い当たることがあった。

私はしばらく自律神経の乱れからか、
バイオリズムが低調で、
Nちゃんとのメールのやり取りも
最小限だった。

前日の土曜日、彼からのメールに対して、
少し気分の上がった私はこう答えた。
「誰かとデートしようかとも思ったけれど、
今日は一人で買い物しています。」

嫌味なのは分かっていた。
そう、とても意地悪だった。
でも、『私は寂しいのだ』ということを
ただ伝えたかっただけでもあった。
(やり方が間違っていたけれど)

そのメールに対して、こう返信があった。
「誰かとデートするんだ…」

「しないよ。」

「でも、そういう人がいるんだ…」

「いてもしないよ。」

「いたらするんだ。」

「いないし、しないよ。」


そんなやり取りは私にとったら、
他愛もない、やり過ごす程度のことだと思っていた。




デー トから帰って、その夜、
私は彼にメールをした。
「今日、Nちゃん意地悪で攻撃的だった…
悲しくて、何度も涙をこらえたよ。」

すると、彼からはこう返信があった。
「えぇ~(>_<) 姫ちゃん、ゴメンね。
そんなつもりは全然なかったよ。」

「すごく攻撃的だったよ。」

「ゴメンね。そんなつもりは全くなかったけど、
姫ちゃんの「誰かとデートする」が引っかかって
いたのかもしれません。」


やっぱり…

それで、「やっぱり…」
と、私はメールを返し、
「しばらく、私をそっとしておいてください」
と送信して、ひとり、 色々と考えた。