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姫日記

恋する気持ちを持ち続けていたい姫の日記です。

Nちゃんは私をがっかりさせる名人だ。

昨夜もそんなことがあった。
だから、今朝は「おはよう、姫ちゃん。昨日はごめんね。」
のメールから始まった。

Nちゃんは「姫ちゃんに期待されなくて悲しい」とか
「姫ちゃんの気持ちを酌むように頑張る」と言う。
けれども、その思いのものさしが違うのか、
「ふん、やっぱしね、、、」と、なるのだ。

今朝のメールには
「別に大したことじゃないし、怒るほどのことでもないし。
ただ、一事が万事っていうか。私をがっかりさせる名人だよね。
私のために何かをするというより、Nちゃんが「こうしたい」
と思うかどうかだと思うけど。
だから、謝ることでも、気を付けることでもないと思う。」
と、返した。

私が望むから、そうしてくれることより、
彼が心からそうしたいと思ってくれることのほうが、私は嬉しい。

すると、しばらくして
「今、何してますか?」のメールが届いた。

「洗濯物をたたんでいます。」と返すと、

「じゃあ、お昼ご飯一緒に食べよう。」と返ってきた。


約束の時間にいつものショッピングモールの駐車場で落ち合い、
Nちゃんはすかさずこう言った。
「姫ちゃん、怒ってる?」

「え?怒ってないよ。何か私が怒るようなことしたの?」

「まさか、、、ちょっと聞いてみただけ。」
そう言って、Nちゃんは歩きながら私のお尻を鷲掴みにした。


パスタを食べ、しばらく車を走らせる。
どうも噛み合わない会話に、しびれを切らしたNちゃんは
いやに真剣な顔でこう言った。
「姫ちゃん、、、オレのこと嫌い?」

「嫌いじゃないよ。」

「でも、そのうち嫌いになる?」

「ならないよ。」

「けどさ、オレのことがっかり名人だって、、、
だから、そのうち姫ちゃんがオレのこと嫌いになるんじゃないかと。
どんなに想い合ってても、何もかも分かり合えるってないと思うんだよ。
無理だと思うんだ。だから、姫ちゃんのこと、オレは分かりたいって
思うけど、姫ちゃんがオレは分かってない、って言うから。」

「嫌いにならないし、私はNちゃんに自分の気持ちを伝える努力をするよ。
分かりたくないって言うなら別だけど、分かってほしいと思うから。」

「分かりたいよ。けど、そのうち嫌になるんじゃないかなって、、、オレのこと。」

「ならないって。」

「ほんと?でも、今まで付き合ってた男は姫ちゃんのこと分かってあげてたでしょ。」

「そうだね。何も言わなくても分かってくれてた。」

「そうなのか、、、ヤキモチやけるな。」

「何で!でも、その人と今はもう一緒に居ないんだよ。結局、居られなかったんだよ。」

「そうだけどさ、、、」

「どうしたの?」

「姫ちゃんとずっと一緒に居たいけど、オレはがっかり名人だから。」

「もうーーー。私だってNちゃんと一緒に居たいよ。」

「ホントに?ありがとう。約束する?」
そう言って、Nちゃんは小指を出した。

「オレはどんな男にも負けないから。姫ちゃんをほかの男に絶対に渡さない。」

「うん。ありがとう。」

そうして、やっと不穏な空気が払拭された。
けどなぁ、、、がっかり名人なんだよなぁ、、、、


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昨夜、妹からメールが届いた。
次女の彼から届いたというLINEが添えられている。

私の姪は高校一年生。
彼は高校三年生で去年の夏ごろから付き合っている。
それはそれはもうラブラブな二人。
彼は190cmを超える長身で、プロ野球選手を目指していたそうなのだが、
ケガで断念、高校卒業後は就職することが早々と決まった。

その彼の就職先は、私の彼Nちゃん仕事にも通じる
まぁ、硬い体育会系の職場だ。

就職先が決まって、既に学校に来ることもなく、
高校生の二人はもっぱら、互いの家を行き来している。
妹は寛容なのか、お泊りも許しているのだ。
「卒業したら結婚する」と、言っているらしい。

そんな二人なのに、、、
どうやら、この一か月喧嘩が絶えないらしい。
彼は就職するまでの自由を謳歌したいのだろう。
しかも春からは厳しい研修も始まり、その研修地は、
ずいぶんと離れた場所になることが先日決まった。

しばらく会うこともままならない、
彼は彼で友達との時間、就職へ向けての準備に忙しい、、、
そんな状況に姪っ子は我慢がならなかったのだろう。


妹の元に、次女の彼から届いたLINEは、、、
M(姪っ子のこと)と別れることになりました。
僕は正直、別れたいなんて思っていません。
でも、この一か月、考えが合わないことが多くて、
僕がMをそんな気持ちにさせてしまったんだと思います。
僕に対して、もう冷めた、と言われました。
いつも家族のように優しく接してくれて、うれしかったです。
泊りに行きっぱなしで、何の恩返しもできなくてすみません。
家族の皆さんに、よろしくお伝えをお願いします。

、、、こんな内容だった。


なんて、良い子なんだろう!!


姪っ子が「別れる!」と言ったのなんて、
本心じゃないに決まってる。
けど、きっと、寂しい気持ちをどうすることもできないんだろうな、、、と思った。

彼が100%受け止めることは難しいだろうし、ね、
と、妹と話していたら、
今日の午後、
「仲直りしました!すみませんでした。」と連絡があったそう。

ヤレヤレ・・・


イマドキの高校生の恋愛も、大人の恋愛も
まぁ、本質は同じだなと思った出来事でした。
Nちゃんは肉体派だ。
鍛え上げられた体をしている。

私と同い年の現在、46歳。
年齢を感じさせない体ではあるが、
最近、腰回りに余分なものがある。
「これ何?」

「つかまないの、姫ちゃん。いざという時のために蓄えているんだよ。」
そう言っていた彼が、ひと月ほど前からダイエットをしている。

「いざという時のために蓄えているんだ、って言ってたよね。」

「ちょっと蓄えすぎた、、、制服がきついんだよ。ヤバイ。」

お腹が出ているわけではないけれど、横っ腹が
5センチほどつかめるのだ。確かに、蓄えすぎだろう。
制服は再支給されないそうだ。
「制服に合わせて体型を保てってことだろうね。」


それから、彼は毎日筋トレをし、昼休みには5キロ走っている。
「今日も走ってきたよ。」
毎日、昼休み明けにメールが届く。

徐々に成果が出始めて、腰回りがスッキリとしてきたこのごろ。
「良かったね。けど、背中にもうっすらと余分なものが、、、、」

「そうなんだよ。20代のころは引き締まってたのになぁ。」

とは言うものの、Nちゃんの体は均整が取れて
筋肉も隆起している。
後姿を見ると、ちょっとうっとりするぐらいだ。

「ねぇ、ねぇ、20代のころ、Nちゃんって、モテたでしょ?」

「そうでもないよ。」

「あーー!モテなかったら、『モテないよ』って言うよね。
『そうでもないよ』なんて、言わないよね。」

「アハハ・・・」

20代のころのNちゃんに会ってみたかった。

でもな、会っても、すれ違ってただろうな。
私、体育会系の人が好みではなかったから。


タイムマシーンに乗って、会いに行ってみたい。
Nちゃんは楽天的でマイペースな人だ。
私の気持ちは説明に説明を重ねないと理解できないでいる。

だから二人の間にはズレのようなものが横たわっている。

「姫ちゃん、どこに行こうか?」
そう言われても、、、返答に困る。

行きたいところはたくさんある。
けれども、限りある時間のことを思うと、何も言えない。
すると、彼は
「何だ、、、姫ちゃん行きたいところあるのかなと思ってたのに。」

結局、その日は当てもなく車を走らせ、ラブホに行った。
帰りに、Nちゃんは
「こういうのばかりでもね、、、どこかに出掛けたりしたくない?
バランスって言うか、、、」
そう言いながら、ハンドルを握った。


その夜、彼からは
「今日も姫ちゃんにいっぱい愛してるって言えて良かった。」
と、メールが届いた。

「私も嬉しかったよ。」
と返した後に、「でもね、、、」と加え、
「私とNちゃんの間にはズレのようなものがあると思う。」
と、送った。

「困ったね。ズレを直さなきゃね。と、彼。

だから、思ったことを正直に綴った。
「例えばね、今日、『どこに行きたい』と、聞いてきたけれど、
どれだけの時間が私に与えられるのか分からない、何の材料もなく
答えることなんてできないよ。たくさん行きたいところはあるんだよ。
けど、近場で行きたいところなんて限りがあるでしょ。
それを『何だ、行きたいところないの?』って言われる、
この切なさがNちゃんに分かりますか?」

しばらくして、「以後気を付けます。迷惑かけちゃったね。」の返信。

「私の気持ち、理解できたのかな?
私は思い通りにしたいわけじゃないんだよ。
でも、Nちゃんがどうしたいのか、何をしたいのかが見えないし、読めない。
そんなNちゃんを、私はマイペースな人だなと思うし、
私の意図を汲むことのできない都合のいい人だよなと思います。」
と送った。


「姫ちゃんの意図を汲むことができないオレでごめん。
姫ちゃんに嫌われたら困るから頑張る。」と、彼。

「嫌わないけどさ、、、
嫌わないけれども、こういうのが続くと、そのうち我慢して、諦めて、
そして何も言えなく(言わなく)なるんだろうなって、思います。」と、返した。

「それは、嫌いになるってことだよね、、、」と、彼。


そうか、たしかに。
我慢して、諦めて、何も言わなくなるのは、嫌いになるのと同じこと。

だから、
「そうだね。そうならないように、私は私なりに一生懸命
私の気持ちを伝える努力をするし、テストもするし、宿題も出すし、
追試もするよ。」と、送った。

Nちゃんは、素直な人なので、
「ありがとう、姫ちゃん。嬉しいよ。頑張るよ。」
と、返ってきた。



うーん、、、、
このズレ、どうにもなりそうにない。
そして、その翌日。
正午を過ぎたころNちゃんからメールが届いた。
「姫ちゃんは午後から何をしていますか?」

「何にもしていないよ。」の返信に、
「今日も逢いたい。」と返ってきたので、
また、同じ場所で待ち合わせた。

助手席に乗り込むと、Nちゃんはすぐに車を発進させた。
「どこに行こうか」とも、何も聞かず、意を決したような表情だった。
5分ほど車を走らせると、目の前にはラブホが。
「え?」
思わず、私は声に出した。正直びっくりしたから。
Nちゃんはそういうキャラとは程遠い人だという認識があったからだと思う。

「姫ちゃんが嫌なら、やめるけど。まだ早いって言うなら引き返すよ。」
彼がそう言ったので、私は
「ううん、嫌じゃないよ。」と答えて、従った。

服を脱ぐのを手伝ってもくれた。
お風呂の支度もしてくれた。
そして、私を抱き上げてバスルームに連れて行ってもくれた。
(姫ちゃんをお姫様抱っこしたい、と彼はかねてから言っていた。)

Nちゃんは私を膝の間に入れると、
私の手を取り、指を一本一本舐めた。
手の指を舐め終えると、今度は足の指。
そして、今度は、私の脚の間に指を差し込んだ。
私が彼のものを手に取ると、彼は腰を浮かせたので、
そのまま目の前のものを口に含んだ。

長いバスタイムを終えると、Nちゃんは私の全身を
バスタオルで拭いてくれた。
「優しいね、Nちゃん。」
「当たり前。オレのお姫様だからね。」

ベッドに行くと、体全体を密着させて抱き合って、
彼は私を舐めた。長く長く。

そのあとNちゃんは正常位で挿入して、
やっと一つになった。
私の脚を高く持ち上げ、「ほら、奥まで入ったよ。」と言った。

後ろから、そして、私が上に乗って、次は正常位。
正常位の途中でコンドームをつけると、そのまま一気に
Nちゃんは激しく動いて、「姫ちゃん、いくよ。」と声に出して
大きくあぁと息を漏らして果てた。

果てた後も、Nちゃんはそのままの体勢で私の上に乗ったまま
動かなかった。そして、私の手を取り、自分の背中に持って行った。
背中が汗でびしょ濡れだ。
「すごいね。びしょ濡れだよ。」

すぐに、バスルームに行くと思ったら、
Nちゃんはそうはしなかった、コンドームを取り、ティッシュで拭きとると
「おいで」と、肩を示して、腕枕で抱いてくれた。

そのあと、静かにしていると、Nちゃんは私の背中をトントンと
寝かせるように叩いた。数分後、Nちゃんの頭の重みを感じたと思ったら
スーッと寝息が聞こえてきた。

あまりに笑えて、クスクスと笑うと
「何?どうしたの?」

「すぐに寝るからおかしくて。」

「寝てないよ。」
真顔で否定する彼がおかしくて、さらに笑った。

しばらくして、「さ、姫ちゃん行動開始だ。」と
ベッドのふちに腰掛けたNちゃんは背中を示して、
「はい、乗って」と私を負ぶって、再びバスルームへ連れて行った。

Nちゃんと初めてセックスした時のことも、忘れないうちに綴っておく。


初めてデートした別れ際、待ち合わせ場所の
ショッピングモールの駐車場に戻ったけれど、
離れ難く、「あと30分だけ一緒にいたい」と彼の車の中に居た。

そして、昼間よりももっと気持ちがこもった濃厚なキスをし、
彼は私を強く抱きしめ、私の体中をまさぐった。
私が遠慮がちに彼に手を伸ばすと、既に硬く反応をしていて、
(そういうのが、私にとって久しぶりだったので・・・)
ズボンの上からではあるけれど、先端をそっと円を描くように
撫で回した。
Nちゃんが「姫ちゃんどこ触ってるの?」と聞くので、
「Nちゃんの中心」と答えた。
ますます硬くなって、ベージュのコットンパンツのその部分が
濃く染まったのを薄暗い車の中で確認した。

「良かった・・・姫ちゃんがやらしくて。」
「やらしくないよ、普通だよ。」

最後に、そう言葉を交わして車を降りた。
体が熱くなって、後ろ髪を引かれはしたが、
そうするほかなかったから。

「トライアルキャンペーン中なんだよ、分かってる?
努力しないと、合格しないんだよ。」

「頑張る。」
Nちゃんは、そう答えたのに、、、


昨日はちょっとしたことがあり、だから、
「今日のテストは赤点です。宿題、補講、追試です。」
と伝えた。

「ゴメンゴメン」
と返ってきたので、

「自習なり、復習なりしてなさい。」
と送って、放っておいた。
数日前、色々な事に疲れ果てていた私。

Nちゃんに「電話してきて」とは言えず、
一人で悶々と過ごしていた。

私は私なりに訴えているのに、それを分からないなんて
全く、どんだけ鈍感なんだと一人憤慨していると
「大好きだよ」と、メールが届いた。

「証拠は?」
と返すと、本文のないメールに写真が添付されて返ってきた。

チュー顔のどアップに、思わず吹き出してしまった。
「これが、証拠?もう少しイケてるものを。」
と送ったら、今度は、先日出席した部下の結婚式で
スピーチ中の真面目な写真が送られた。

「これがイケてるの?」
と返すと、今度は、
花粉症に苦しむ彼の鼻栓姿が送られてきた。
「笑かさないで。」と返したけれど、
この変顔に、私の気持ちは少しだけ上がった。

だから
「本当は40点だったけど、写真を送ってくれたから
今日のテストは55点ね。」
と、返した。


私の扱いを勉強すると宣言した彼に、
時々試験をすることにしたのだ。
定期試験のほかに、抜き打ちテストをすることも伝えてある。

「低かったね・・・」
涙の絵文字とともに、返事が届いた。
「誰かと会えない寂しさは、ほかの誰かで解消できるわけじゃない」


当たり前のことかもしれないが、私はなかなかそうは思えなかった。
ほかの誰かで解消したり、埋め合わせができるのだと、簡単に考え、
期待していた。

そんな私の考えのせいで、数年前、ひろとの間にあの事件が起こったのに。
それでも、学習できていない。

思い通りに行くわけなんかない。
何でもかんでも私に合わせてもらおうなんて、不可能。
・・・頭では分かっている。


なのに、私は同じことをしようとしている。
Nちゃんに会えない寂しさを、ほかの誰かで解消しようとしている。


けど、やめた。


Nちゃんからのメールはすべて保存している。
受信メールだけで既に5000通を超えているので、
私と彼の間をほぼ5000往復していることになる。
「おはよう」や「お疲れさま」といったごく短文のメールも
多数あるけれど、そのほとんどからその時の気持ちが読み取れる。


昨夜、眠れずに保存メールを開いてみた。
付き合う前の、私のツレないメールに対するがっかりした反応や、
私が丁寧に返したメールに対する喜び、ストレートな想いに始まり、
「オレと付き合ってくれませんか?」と言われたあとの、親しみを込めた
メールを読み返した。

最初の500通ほどしか読み返せなかったけれども、改めて気が付いた。
私はツレなかったり、親しげだったり、試してみたりと波があるのに対して、
Nちゃんのメールのニュアンスはいつも同じ。
常に変わらないスタンスで私を受け止めてくれている。

なのに、私はジタバタと手を変え、品を変え
「一つ欠けているなら、もう全部要らない!」という態度を取り、
なだめられては「ごめんね」を繰り返している。


私、馬鹿だな。

Nちゃんと会えない寂しさを、誰が埋めてくれるのか。
それはNちゃんでしかない。
ほかの誰かで埋めようとしたって、無理なんだ。


保存メールを読み返しながら、改めてそう思い、
午前2時、ようやく眠りについた。
今の彼、「Nちゃん」としておこう。
Nちゃんと初めてデートした時のことを忘れないうちに、残しておく。

「オレと付き合ってくれませんか?」
そう言われた翌日、デートをした。

朝、家事をしていると
「今日、逢えますか?デートしよっか。」
と、メールが届く。

お昼過ぎに、私の自宅にほど近い大型SCの駐車場で待ち合わせた。
Nちゃんは高速を2区間乗り、わざわざ来てくれたのだ。

車を持たないひろを、いつも私がお迎えにいく役だったので、
男性のお迎えはとても新鮮だったことを覚えている。

Nちゃんから約束の時間よりも10分早い到着のメールが届き、
私は自分の車を降りて、彼の車の助手席に乗った。
自分で運転することなく、男性の隣にいるということが、また新鮮だった。

車を小一時間ほど北に走らせ、大きな鎮守の杜へ。
車を降りると、彼は私に手を差し出した。
手をつなぎ、鳥居をくぐって静かで厳かな参道を歩く。

お参りを済ませると、「姫ちゃん勝負しよう」と、Nちゃんは言い、
おみくじの料金箱に二人分のお金を入れた。
結果は確か・・・中吉と小吉、じゃなかったかな・・・

参道を外れ、杜の杉の木立に囲まれた川沿いの道に出た。
人けのないその場所は空気がひんやりしている。
しばらく歩くと、Nちゃんは突然立ち止まり、私に向き合うように姿勢を変えた。
私が、躊躇していると、体をかがめてキスをした。
咄嗟のことに、思わず顔を背け、下を向き、彼に抱きついた。

抱きつきたかった訳ではないが、キスをされるのを避けるのと、
私の羞恥心のためだった。
「恥ずかしい・・・こんなところで」

「誰も居ないよ。」
再び、私の顔を覗き込むように、Nちゃんは私を見つめ、そしてキスをした。
観念するように、キスをしたけれど、その時の私の気持ちは複雑だ。

気持ちが高まっていたわけでもない。
心から彼を好きだという気持ちがあったわけでもない。
それに何より、ただただ恥ずかしかった。

完全に彼がリードをしていたが、強引ではなかった。
今思えば、Nちゃんだって相当ドキドキしていたはずだ。
「飛び込んできてもいいんだよ」という
安心感を感じる抱擁とキスに私は負けた。

しばらく歩いて駐車場に戻り、再び車に乗る時には、
もうすっかり恋人同士の気分だった。
私も、彼も、同じように恋に落ちた。

ハンドルから放した左手は、私に差し伸べられて
そして、ずっと手をつないでドライブした。

郊外の素敵なカフェでお茶とケーキを前に、
その後、何時間も飽きずに話をして、日が暮れていった。


これがNちゃんとの初めてのデートだ。

私が仕事をしているオフィスは駅前にあり、
北西に数分ほど歩くと、いわゆる歓楽街がある。

そこは、ひろのお店があって、生活のテリトリーとなっている。

だから、もうずっとその辺りには近付けなかった。
駅前に買い物にも来るだろうし、そのテリトリー以外で
偶然に会うことだってあるだろうけれど、
9月初旬に会ったのを最後に、ひろを見かけていない。

できるだけ、外を出歩かないようにしていたし、
お酒も飲みに行かなかった。
歓楽街を避けて避けて過ごしていた。


数日前、ちょっとした用事で、
ひろのお店のすぐ近くに行かねばならなかった。


その辺りを歩きながら思った。
ひろのテリトリーは、かつて私のテリトリーでもあった。
あんなに日常だった、この場所に私が足を踏み入れたのが
半年ぶりということに、とても驚いた。

あれから半年が過ぎたのか。
私は動じない男が好きだ。
そういう意味では、ひろは動じちゃう人だったな、、、
寛容で、器が大きな人だと思っていたんだけれど。相当な見当違いだった。

夫もそうだ。
ひろと違って、夫は動じない人ではある。
あるけれども、裏を返せば、鈍感で無神経で無頓着なだけだった。
それが心底嫌だ。



そして、彼は。

彼は動じない。無神経でも無頓着でもない。
いつもポーカーフェイスで、マイペースだ。
感情に波がなく、穏やかで静かだ。

けれども、、、、どうも鈍感で。
それとも、私が鈍いのか?


彼は、制服を着る仕事に就いている。
冷静沈着さも求められる。
彼が動じないのは、そんな仕事に就いている
職業病みたいなものかとも思う。

もちろん、その職業に就く全ての人が
彼みたいではないだろうが。


先日のドタバタバレンタインデーのさ中、
「そんな鈍感じゃ困る」と私は言った。

「ごめんね。もっと努力する。」

「何を?何をどう努力すればいいか分かってないんでしょ?」

「頑張る。姫ちゃんのことをもっと勉強する。」

「じゃあ、私が先生になってあげるよ。」

「よろしくお願いします。」




と、こんなやり取りをしたのに、結局、何だかなぁ、、、なんだよね。


いつものポーカーフェイスで彼は私を見つめる。
昨夜、無事にチョコレート&カードを渡した。
帰宅途中、先に到着した彼からメールが届いた。
帰宅直後にすぐ中身を確認したのだろう。

「素敵なカードとチョコをありがとう。」


ちょっと刺激的なカードを送ったので、一応、
「カードは適当に処分してください。困らないように。」
と、建前の配慮をしてメールを返した。

その後、カードが嬉しかったかどうか、確かめると彼は
「カードに書かれていたメッセージがすごく嬉しかった。
姫ちゃんはホントにオレのことが好きなんだなぁと思った。」
と、メールを返してきた。


ん?
カードに何て書いたっけ?
確かに、何かは書いた・・・


けど、覚えてないよ。
ギャハハ^_^;
私はイベントごとがあまり好きではない。
生来の天邪鬼な性格のせいで、皆がこぞってやる
クリスマスやバレンタインデーのようなイベントが苦手なのだ。

今日はバレンタインデー。
彼は私と違って、とても真っ直ぐな人なので、
何となく待っているかもしれないなと思って、
この日が来るのを、私は居心地悪く感じていた。

そして、思い切って、木曜日に私の好きなチョコレートを買い、
帰宅してから特別なカードを用意した。
数年前にプロのカメラマンに撮ってもらったヌード写真に
少しの言葉を添えたものだ。


バレンタインデー前日の昨日、金曜日、
きっと「今から会える?」と連絡があるような気がして待っていた。

、、、のに、仕事上のトラブルで彼は終業が遅くなり、
結局、会えなかった。

けれど、私の気持ちだけはどうしても伝えておきたくて、
「チョコあげる。」とメールをした。
加えて、彼を試すように
「本当は今日、渡したかったんだ。けど、いつでもいいから。
今度会えた時に。」と送った。

私は、最大限に伝えたつもりでいたし、
喜んでくれるはずだと、タカをくくっていた。


そして、今日。
まぁ、全く無反応だった。
悲しくて、ガッカリして、怒れる昼下がりを過ごし、
ネガティブな気持ちをセルフケアした。

午後5時を過ぎたころ
「姫ちゃん、姫ちゃん❤」と暢気なメールが届いたので、
私が如何にガッカリして悲しかったかを長文のメールにしたためた。
「私にとっては特別なことで、昨日、いつでもいいと言ったけれど、
それは私なりの遠慮であって、私に対する気持ちがあるなら、
受け取りたいと自然に思うものだと思っていた・・・」という趣旨のメールだ。


すぐに「姫ちゃん!今日はまだ終わってないよ。これから時間ある?」
と、返信があり、、、、

ようやく無事に私の曲がりなりにもバレンタインデーが終わった。

「本当に申し訳ありません。」
頭を下げる彼に、
「申し訳は、今からゆっくり聞くから。」
と、答えた。
彼は私を好きだと言ってくれる。
私も、彼が好きだ。

ただ、非常に面倒なことに、
彼には妻子がいる。


そうなのだ・・・
これが、今の現実なのだ。

ものすごく制約があり、
当たり前だが、思い通りになることなんて、ほとんどない。


何度も何度も、やめようかと思ったけれど
諦められずにいる。

もうダメかな、
そう思っては、冷たくメールを返し、あるいは返さず
あからさまに意地悪を繰り返してはみた。

それでも、彼は態度を変えることなく
ひたすらに、まっすぐに「好きだよ」と私に言う。


鈍感で私の冷たさと意地悪に気が付いていないのか、
と思ったら、どうもそうではないらしい。


なんか、ひどいことしちゃったな、私。




けどさ・・・
そうは言っても、彼は私のものじゃないから。

「姫ちゃんはオレの恋人」
と、彼は言うけれど、それはどうかな。
都合がいいよな、って思ってみたり。


あ、都合がいいのは、私も同じか。

「私、電池が切れちゃったんだけど・・・」
そうメールすると、彼はようやく電話をかけてくる。

つまり、私に何かしら問題がなければ、電話はかかってこない。

うーん・・・・
何て不自由なんだろう。


私が寂しいと言うと、「何で?」と聞き返す。
そして、「オレはいつだって、そばにいるよ。」と答えるけれど。
でも、それってあまりに心許ない。
だって、それは心の持ち様でしかないから。

「そばにいるよ、って、いないし。触れないもん・・・」
と詰め寄ると、
「あのね、姫ちゃん、オレだって姫ちゃんに触れないんだよ。同じだよ。」
と、返される。


そりゃそうだけど。
この温度差のような、ズレのようなものは何だろう。


それを確かめるために、今日も「電池が切れちゃった」とメールした。
すぐに「電話してもいい?」と返信があった。
今、あらゆることが停止状態だ。
思考も停止中。

こういう時に、何かをしようとすると危険極まりない。

だから、彼とコンタクトを取っていない。
何通目かのメールに
「今、色々なことと向き合っているので、
ちょっと待っててね。」
と返した。

「うん。分かった。俺はいつも姫ちゃんのそばにいるよ。」
とレスポンスがあったのだけれど・・・

内心では
(現に、今、ここに居ないじゃないの。)
と、ものすごく冷めた気持ちで思っただけだ。
もちろん、そんなことは言わないが。

『そばにいる』って、どういうことなのさ。


そういえば、ひろも同じことを言った。
「たとえ、見えなくても、僕は君のそばにいる。」と。


でも、そんなこと言われても。
それが私の何の役に立つのさ!


・・・なんて、めちゃくちゃ冷たい私。
私って、いつもこうだ。


せっせと作り上げてきたものを壊す。
せっかくコツコツと積み上げてきたのに、崩してしまう。
たくさん我慢だってしてきたのに、放り投げてしまう。


今、何もかもが要らなくなっている。
仕事も、何もかも。
持っているものを全部捨てて空っぽにしたい。

そんなこと出来ない、きっとしない。
けれど、もうどうしていいか分かんなくて、
何が大切なのか、何がしたいのかも分かんなくて
だったら、えーい、ほうりなげちゃえ、、、、、みたいな。



ほんとは、何もかも欲しいけど。
何もかも手に入りっこないから。
だったら、全部要らないや。
ひろとは体の相性が良かったと思う。

特別、テクニックに長けていたわけじゃないし、私へのご奉仕に
執心していたというわけでもないのに、セックスが「良かった」のは、
やっぱり体の相性が良かったからだろう。
それは、ひろとセックスをするたびに思ったし、
ひろもそう言っていた。

そんな「体の相性がいい」ひろと十年近く居たからだろうか、、、
ひろ以外とのセックスがどんなだったかを忘れてしまった。

こうしたら、気持ちいい。この体位がいい。
それも、全部、ひろとのセックスだから感じたこと。


今、私が付き合っている彼とは、数回のセックスをした。
が、、、ひろとのセックスで感じたエクスタシーを感じない。
当たり前だが、何もかもが違う。
その違和感は、まだ慣れていないからというのもあるのだろうか。

彼と初めてセックスをしたとき、もっとエクスタシーを感じたくて
「上に乗っていい?」と聞いてしまった。
今、思えば、あれが良くなかったのか、、、、

彼は私を気持ち良くさせることばかり考えているようで、
彼自身の事はどうも二の次のよう。

それが、実は、とてもつまらない。

彼は私をじっと観察し、「気持ちいい?」と聞く。
だから私も「気持ちいい?」と聞き返すと、
ものすごく冷静な表情で「気持ちいいよ」と答える。

その冷静な表情が嫌で「全然気持ち良さそうじゃない」と
尋ねなおすと、
「気持ちいいって」と、相好を崩す。
まるで、ご飯を食べながら「おいしい?」「おいしいよ」
の会話みたいに。

本当に気持ち良かったら、言葉にしなくても分かるものじゃなかったっけ。
そんなことを考えていると、ますますエクスタシーが遠のく。

眠りに落ちた彼が目を覚まし、私の手を導いたので、
手と口を使って彼を愛した。

彼の吐息が漏れるので、少なからず気持ちがいいのか、、、
今度は私が冷静に考えていると
「ダメ、姫ちゃん、いっちゃうよ・・・」
彼は上体を起こして、私を抱き上げた。


彼とのセックス、開発途上。