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姫日記

恋する気持ちを持ち続けていたい姫の日記です。

前の記事にも書いたが・・・

今、私と一緒にいてくれる男性は、とにかくいつも穏やかだ。
イライラしたり、怒る素振りも見られない。
また、何かに動じることもない。

私に「大好きだよ。愛してる。」と毎日、毎日メッセージを送り、
会えば、「とにかく好きなんだ。」と、私を見つめて、視線を離さない。

けれど、それが何故なのかがさっぱり分からない。
「好き」に理由はないのだろうが、ならば、誰でも良いのだろうか・・・

誰でも良いというわけではないにせよ、彼が私を好きだというたび、
私は困惑する。そして、こう思う。

「彼は好きになりたい対象が欲しかっただけじゃなかろうか。
私を好きになったのではなく、好きになれる誰かが欲しかった。
好きになれる誰かを求めて、たまたまいいタイミングで私と出会っただけ。」と。

だから、彼が私の本質(そんなものあるのかどうか分かりはしないが)を見て、
好きになってくれたのか、愛しているのか、どうも疑問に思えて仕方がない。
そんな気持ちをぶつけてみた。

「俺は姫ちゃんのことが好きだし、姫ちゃんのことちゃんと分かってる。
もっと知りたいし、ずっと見ていたい。でも、姫ちゃんがそんなふうに思うのは
俺の愛が足りないからだ・・・」

そんな答えが返ってきた。


・・・ま、いっか。
今は何をしても、何を言っても解決しそうにはないから。
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私がイライラすると、ひろは私以上にイライラした。
私をなだめるなんてことは、滅多になかったように思う。
私がカリカリすると、怒り出すことだってあったし、
逆切れして、バカヤローと怒鳴られることだってあった。

それでも、私はひろが好きで、
ひろは私を好きだった。
そこには深い深い愛があるものだと思っていた。



でも、今はどうだろう。
彼は私に対してマイナスの感情を向けることがない。
そんな素振りが全くない。
イライラもカリカリもしないし、まして、怒るということも、
私に対して何かしら皮肉めいたことを言うこともない。

もともとの彼の性格なのだろう。
「俺はイライラしないし、絶対に姫ちゃんを怒ることもないから。」


私がイライラして、意地悪な言動をしても、困らせるようなことをしても、
同じトーンで私を見て、あきらめずに語りかける。申し訳ないくらいに。
「俺はほかの男と違うから。誰より姫ちゃんを愛してるから。
ほかの誰にも渡さない。」

素直に臆面もなく言う彼を見て、
私は今まで感覚が麻痺していたのかと思った。
昨日、デートをした。

「どこに行きたい?」と言われて答えたのは、
静かな山寺。

大きな寺ではないものの、広い敷地には川が流れ、
京都風の品の良い風情を楽しめる。
以前からここが好きだった。

数年前、ひろとここに来た。
川沿いの道を歩くのも、石段を上るのも
全部私がイニシアチブをとった。
おみくじなんかひかない。
ただ、静かに歩いただけだった。
石段を上るひろは息が上がり、「まだ歩くの?」と言う。



そんな思い出のファイルが昨日、上書きされた。

常に彼は私の手を引き、ペースを合わせてくれる。
本堂にお参りしたあとは「姫ちゃん、勝負だ」と、
おみくじの木箱に二人分の2百円を入れた。

私も、彼も「中吉」。
「ドローだ。」

「愛しぬくべし、って書いてあるよ。」
彼はおみくじを私に見せた。
「恋愛」のところに、そう書いてある。


本堂を下り、川沿い道を進むと、長い石段がある。
「これは結構な石段だね。どのくらいあるの?」

「私がハァハァするくらい。」

「そうなんだ・・・」

石段をドンドン上っても、彼は息が乱れない。
「ハァハァしない?」

「ぜんぜん。姫ちゃんは?」

「ハァハァしてきた。」
私がそう答えると、手を引き上げてくれる。

石段を上りきると、三重塔とお堂がある。
再び息を整えて石段を下ると
「駆け下りる競争しよっか。」

「無理だって。膝にきちゃうよ。」
軽快に石段を下る彼を頼もしく思った。

コートの下が汗ばんだので、脱いで手に持つと
それまで肩にかけていた私のバッグを彼が肩にかけた。


私は女のバッグを持ってやる男が嫌いだった。
ひろにもそう言っていたので、よほどの重い荷物でない限り、
私の荷物をひろが持つということはなかった。


彼はあまりに当たり前に私のバッグを肩にかけたので、
何も言わず、ただ、嬉しいなとだけ思った。
「ありがと。」

「姫ちゃんは俺のお姫様だから。」


こうして、昨日、一つのファイルが上書きされました。

今日は、海へ行った。
人がいない砂浜の風紋が美しく、しゃがんでじっと見ていた。

私は、一人じゃない。
帰る家もある。
仕事もある。
今日食べるご飯もある。
こうして出掛けるための車もあるし、運転だってできる。

私は、無力なんかじゃない。
星を見ていると、メールが届いた。
「まだ仕事中かな」

彼からだ。
彼の「仕事終わって今から帰るよ」のメールに返信しなかったのだ。

「今、○○山頂で星を見ています。」と送ると、
「良かった。心配したよ。」と返ってきた。

彼から一日に何十通もメールが来る。
もちろん、私が返すから、何十通にもなるのだけれど。


そんな彼に、私は依存してしまいそうで、
それが苦しくて苦しくて、一人で星を見に行ったのだ。

ひろと過ごした10年程の長い年月の間に、
私は、一人の時間をどう過ごしていいのか、すっかり忘れてしまった。
ひろに依存することで、色々なことから逃げていたようにも思う。

まだ、その習慣は抜けないけれど、とにかく前を向いて進まなきゃ。

「私は、一人で生きていくの。」そう送ると、

「俺はもう必要ないの?悲しいよ。」と返信。

「そういうわけじゃないんだけど、他力本願じゃダメだと思ってね。
自分のことを嫌いにならないために。おやすみ!」


朝が早い彼に、一方的におやすみをした。



仕事帰りに思い立って、山へ行った。
標高800メートルほどのその山まで1時間ほど。

その山頂は、人口の明かりがなく、街の明かりも遠いため
星がとても綺麗に見えるのだ。
帰宅の途中に、空が曇っていないことを確かめ、
北へ北へと車を走らせた。

暗い細い山道をハイビームで照らしながらひたすら走る。
山道を10キロほど上ると、山頂だ。

山頂には大きな神社があり、広い駐車場がある。
もちろん、誰もいない。
真っ暗闇かと思ったら、初詣のためなのか、
参道の階段には小さな灯篭が並んでいる。
仄暗い灯篭なので、暗闇には変わりはなかったけれど・・・

車を停め、ライトを消すと、フロントガラスの向こうは
漆黒の闇。そして、上を見上げると満天の星。

わぁ~、と思わず声を出してしまうほど、無数の星々が瞬いている。
プラネタリウムより、ずっとずっと綺麗な星空。

白い星、赤い星、青い星。
星と星の間にはモヤモヤした星雲まで見える。

心と頭にたまっていた澱を浄化するように天を仰いだ。

幸い、今夜は風もなく、気温もさほど低くはない。
インパネが示す気温は3℃。

道路の脇にはうっすらと雪が残っているものの、
ちっとも寒くはなかった。
静か過ぎて、暗過ぎて、ちょっぴり怖くはあったけれど。

名残惜しくて惜しくて、ずっと眺めていた。

同じ景色を見た。

細い道への曲がり角。
先に進んで車を止める。

エレベータに乗ってガラス越しに見下ろすロビー。

部屋の家具の配置。
壁に掛けられた陳腐な絵。
ベッドの枕元のコントロールパネル。


同じ景色を見た。


ひろとここに来たのは、もう5年ほど前になるだろうか。
ひろが部屋を借りてくれるまでは、毎週ここに通った。
週に二度来ることもあったと思う。

まさか、同じ景色を違う人と見るとこになるなんて。


ベッドで彼のものを口に含む。
含みながら、同じ景色を見ているんだと心でつぶやいた。
彼は声にならない吐息をもらし、私の顔を覆う髪をかき上げた。



この部屋で、私はひろに抱かれ、
ひろと眠り、激しく喧嘩をし、罵り合いもした。

景色は同じなのに、なぜこうも違うんだろう。
心の中でそう思っている私を、彼はおぶってバスルームへと連れて行った。