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姫日記

恋する気持ちを持ち続けていたい姫の日記です。

ひろとのことを一旦「お休み」にしたのは、いくつかの理由がある。
一番大きな理由は、拭い去れない罪悪感だ。

家を飛び出して、子どもたちとしばらく離れて、それが
とてつもなく大きくなった。

先月の半ばだったろうか、長男と二人で出掛けた。
助手席に座る長男を呼びかけるとき、つい「ひろ、、、、」と
言いそうになった。
言葉に出る寸前で飲み込んだけれど、そんなことは初めてで、
しかも、あまりに「ひろ」という呼びかけが自然に出たせいで、
私はものすごく動揺した。

誰といるより、ひろといる時間が長いせいだ。
そのことが怖くなった。
そして、子どもに対して罪悪感でいっぱいになった。


自分の中に芽生えたどうしようもない自分への不信感。
それが何より恐ろしかった。
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ひろのことを考えない日はない。
ひろを思わない日もない。

ふとメールを送ろうか、いや、電話をかけようかと
携帯を手に取っては止めることを何度も繰り返している。

そうだ、手紙を書こうと便箋を目の前にしても
結局、何を書けば気持ちが収まるのか分からず、
何にもしないままだ。

ひろを恋しく思うけれど、それと同じくらい
苦い思いも甦る。
その苦い思いが、色々な衝動を
どうにかこうにか収めているのかもしれないな、と思う。

ここに至るまで、色々なきっかけがあった。

7月だろうか、6月だろうか、
ひろと映画を観に行ったときのこと。


その日はひろのお店もお休みで、一日二人で居る予定だった。
お昼ご飯を食べ、買い物に行き、お茶を飲んで、映画館に行った。
そこで、ひろの知り合いと会った。
(こんなことはよくあること。想定範囲だ)

同じ映画を観る予定らしく、何やらバツが悪い。
ひろは入り口で少々の挨拶をして、私と席に座った。

映画のエンドロールが始まるや否や、
ひろは席を立ち、私を促した。
映画を観るときはいつもこうだ。

だから、私はこう言った。
「いつもなんだけどね、、、私、エンドロールで席を立つのが嫌なんだ。
いつもひろはさっさと席を立つけど、私は最後まで観たいのに、、、」

このことがひろに火をつけた。

「知り合いが居ただろ。最後まで居れば、あの夫婦と一緒に出なきゃいけなくなる。
そうしたら、ずっと喋りながら出ることになるんだ。そうしたら、それを君が嫌がるだろ。
だから、そうしないために席を立つんだ!!!」

「でも、いつもじゃん、、、知り合いが居ようと、居まいと。
映画のエンドロールだって私は作品の一部だと思ってる。最後まで観たい。」

「じゃあ、これから映画を一緒に観るのはやめよう。それぞれ好きな映画を
一人で観に行けばいい。」
ひろの表情はすっかり氷のように冷たかった。

私はそんなつもりで言ったんじゃないのに。
今まで遠慮して言えなかったことを言っただけなのに。
今でも、何故そうなったのか、私には理解できない。
街で知り合いに会うことは、それまでだって何度もあった。
私はそれを避けたこともなかったし、ひろに何か訴えたこともなかった。

映画館を出たのは午後6時を過ぎていた。

ひろは憮然とした表情で言った。
「これからどうしますか?」

私が答えに戸惑っていると、再びひろはこう言った。

「帰りますか。」

意味が分からず、「どこに?」と問い直したら、
ひろは「店に」と答えた。

そういうことかと、私は頭にきて「分かった。じゃあね!」と
吐き捨てるように言って、背中を向けて荒々しく歩いて
ひろのもとから立ち去った。

そうする以外に方法はいくつもあったと思う。
ひろも頭にきたのかもしれないが、私だってそれ以上に頭にきた。
何て、心が狭い奴なんだと憤慨した。




映画館で知り合いにあっただけで、逃げるようにしなきゃいけないの?
どうして堂々としないの?
普通にすればいいじゃない。

ひろがどうしてあそこまで怒ったのか、分からない。


けれども、同じように火が付くポイントは他にもいくつもあった。
何度も何度もあった。


私が求める穏やかさと豊かさを、ひろに求めちゃいけないと
何度も何度も思った。
今も思う。
けれども、やっぱりひろは大事な人だ。

(何が書きたいのか、よく分からなくなった、、、、)
言葉に出来ないのではない。
言葉にしてはいけない、と思っている。


本当は今だって、ひろと一緒に居たい。
離れたくない。
もっと軽く受け止めて、コレはコレ、ソレはソレと考えたい。
でも、出来ない。
しちゃいけないと思っている。

今の私がしていることはただの「綺麗事」か。
それは分からない。
そうかもしれないし、そうでないかもしれない。

ひろと一緒にいるために、まず、しなくちゃならないことをする。
同時進行はできない。


仕事も、家庭も。
誰にも言わず、言えず、コソコソと隠れていたくない。
嘘をつきたくない。


ひろに送った手紙に対して、二日後届いたメールには
こう書かれていた。



手紙ありがとう。嬉しかった。
どんな時も君を受け止めなきゃいけなかった。
やせ我慢でも、いつか落ち着いた住処を。
君以外考えられない。
それまでさようなら。
君の言う清々しい僕でいるからね。
じゃあ、いつか。

ちょっと遠くから君を想い続けているから。
僕には必要なことだから。
じゃあ。




このメールを何度読み返しただろう。
何度も、何度も、何度も読んだ。
仕事帰りに、思い立ってお部屋に向かった。
つい数日前まで普通に「帰宅」する道をたどって。

ひろに宛てた手紙にはっきりと「部屋を引き払う」とは
書かなかったけれど、綺麗に片付けるからあとは
よろしくお願いしますと書いておいた。

(ちゃんと意図を汲んでくれただろうか、
無駄な家賃を払わないで済むように処理してくれた
だろうか、、、)

そんなことを思って、確認をしに行ったのだ。

お部屋にはハロゲンヒーター、テレビ、テレビ台、冷蔵庫、ベッド、
それからひろのちょっとした荷物を紙袋に入れたものを残しておいた。

ゴミ出しのタイミングが合わずに捨てられなかった空きビンと
壊れた電気ストーブには、
「面倒をかけますが、捨ててください」の簡単なメモを貼り付けて。

もっと気が利いたメッセージを残そうかとも思ったが、
もう十分、私の意志は伝わっているだろうからやめた。


お部屋はデジタルロックで、ひろと私にしか通じない言葉を
数字で表した暗証番号にしてあった。
・・・まだ開くだろうか、、、

数字を入力するとロックが解除されドアは開いた。

部屋の真ん中に残しておいた一塊のものは
綺麗になくなって、代わりに、キッチンには
ひろのお店で使うおしぼりが一つ置いてあった。

掃除に必要だろうと持ってきたのだろう。

ポツンと置かれたおしぼり一つ。
それを確認して胸が詰まった。


ひろに何かしらのメールをしたい気持ちになったけれど、
ダメダメと頭を振って部屋を後にした。
ひろのことを思わない日はない。
ただ、センチメンタルな気持ちになるわけではないが。

毎日、毎日、心が揺れて定まることもない。
今日決めたことさえ、明日になればまた迷ってしまう。
その繰り返し。

昨夜は、一人で眠りながらひろを思って、
見えないひろに腕を回して抱きついた。
そしたら、途端に涙が溢れて止まらなくなって、
声を押し殺して泣いた。
涙は滝のように次から次へと溢れた。


でも、不思議と寂しくも悲しくもない。
自分で決めたことだから。
ひろを待たなくてもいいから。

待つのは嫌だよ、もう。
ひろへの手紙に
「これからのことは何も描けていませんが、
ひろとのことは一旦、お休みね。」
と、書いた。

手紙を投函したのは水曜日の朝。
ひろの手元の届いただろうか、他の郵便物に紛れて
見逃してはいないだろうかと思っていた。

今日、外出先からオフィスへと戻る途中、
メールの着信があった。ひろからだ。
何の反応もないとばかり思っていたので、意外だった。

「手紙ありがとう、、、」から始まるメールは長文で、
ひろの素直な優しさと愛情に満ちていた。
ひろがすぐそこで、直接語り掛けてくれているような錯覚に、
思わず涙が溢れそうになった。


明日の朝、起きたらバスルームを掃除して最後の片付けが終わる。
そして、私はここを出る。
今日は仕事をお休みにして、お部屋の片付けをしている。
片付けといっても、普段の掃除とは違う。

必要なもの、そうでないもの。
持って行くもの、処分するもの、ひろに委ねるもの。
それらを一つ一つ確認しながら片付けを進める。

ひろがこのお部屋を契約してくれたのが、三年ほど前のこと。
私が家を飛び出して仮暮らしをしていたのがこの半年。
ひろと過ごすためだけに当初あったのはベッド、冷蔵庫、小さなサイドテーブル、
窓には遮光のカーテンと、キラキラするカッティングドロップビーズ照明器具。
それが、少しずつ、タオルが増え、雑貨が増え、掃除道具が置かれるようになった。
「君が寂しくないように」とテレビも後から買ってくれたんだ。

この半年は、私の当面の生活用品をドッと運び込んだ。
洋服や靴、バッグがほとんどを占めているけれど。

トイレに置いてあった生理用品、芳香剤を全部取り出し、
ピカピカに磨いた。トイレットペーパーが一巻きあればもう十分だろう。
化粧道具もバニティケースに全部仕舞った。
クローゼットの中の洋服は何度かに分けて運び出そう。
バスルームは今夜か明日に。

今から、冷蔵庫の中を片付けよう。



今朝、手紙を投函した。
昨夜ひろに書いたものだ。朝起きて、すぐに郵便局へ向かった。後戻りしないように。


なのに、片付けをしながら、ひろのことばかり思っている。
「お昼ご飯食べた?一緒に食べよっか。」
明るく電話してしまいたい衝動にかられた。
センチメンタルな気持ちでというより、片付けが進んで心が少し軽くなったから、
なのかな、、、と思う。

けれど、踏みとどまって、ここに書くことで気持ちを収めている。

ひろに手紙を書いた。
とりとめのない内容になっちゃったけれど。

名刺入れにこっそり仕舞っておいたひろの名刺を取り出して
今、封筒に住所を書き入れた。
便箋も封筒も何の変哲もない真っ白なものを買った。
真っ白のほうがかえって目立つような気がする。

会って色々伝えるには、まだ心が安定していない。
それに、もっともっと後ろ髪を引かれるだろう。

自分でもどうしたいのか分からないけれど、
このままでは居られないから。
だから、自分で決める。前に出る。


ひろと最後に会って数日は錯乱もしたが、
今は、こんなに静かな時があっただろうかと思うほど
心が静かで穏やかだ。

ひろを待つことがないから。
ひろを待つ必要がないから、、、

期待して、意に反してがっかりすることもないから。


そう思うと、これまでどれだけ求め過ぎていたんだろうと
自分に呆れる。


私、勝手かな、、、
躁状態と鬱状態が交互にやってくる。
心を決めたそばから、やっぱり・・・と真逆のことを思う自分がいる。

今日、ひろの検査の日だった。
朝早い時間にちゃんと起きて病院に行っただろうか。
長い検査と待ち時間を一人で過ごせただろうか。

私がひろを思うように、きっとひろも
同じだけ私を思っていることだろう。
ここに居てくれるはずなのに、そばに居てくれるはずなのに、
お昼ご飯は何を食べようか、、、

夏休み中に子どもたちの元へ戻ることを決めた。
その先のことは何にも決めても、想像もしていないけれど。
ただ、私の目の前にあるのは、子どもたちに安定した毎日を
過ごさせること。当たり前のように毎日を過ごさせること。

家を出てから数か月、子どもたちにはあまりにも
不安定な毎日を過ごさせてしまった。
しかも、しなくてもいい遠慮までさせてしまった。
言いたいことを言えない状況をあまりにもたくさん作ってしまった。

私の罪悪感が何に由来しているのか、その元は幾つあるのか
今、正直分からないけれど、その一つがひろのことだというのは確実だ。


ひろを思うと、切ない気持ちと苦々しい気持ちと
忌々しい気持ちと、愛しい気持ちと、それはそれは様々な
思いが交錯している。

そんな思いが私を躁鬱状態へ導く。
ひろとはあれ以来、会っていないし、連絡もしていない。
何度も携帯を手に取り、ふとお店に足を向けようと
心が動くことがあるけれど、そうすれば何もかもが水の泡だと
自分に言い聞かせては、他のことを考えるようにしている。

自分の身の振り方をしっかりと決めたわけではないけれど、
少なくとも、ひろには会わない。会えない。会っちゃいけない。


昨日、二人の息子と食事に行った。
夏休みらしいことを何にもしてないし、旅行も行っていないし、
ちょっと贅沢しよっかと、イタリアンダイニングを予約した。
ゆっくりとコース料理を味わい、たくさんの話をした。

ひろと食事をして、美味しいものを食べる時には
いつも「瓜食めば子どもおもほゆ、、、、」の歌を心の中に
思っていたから、こうして、美味しいものを子どもたちと食べることは
この上ない幸せだった。
現に、このお店はひろに連れて行ってもらったお店だったから。

何年も何年も蓄積した罪悪感を、今、拭うために
何をすればいいのか、答えは決まらないけれど、
その代わりに、家の掃除に勤しんでいる。


清々しい気持ちでいたいから。
ひろには連絡しないけど、きっと分かってくれるはず。
そうだ、大事なことを書き忘れた。


昨日、私はこう言ったんだ。
「私はひろのことが大好きで、一年365日、一日24時間
一緒にいたいと思ってる。でも、それは叶わないし、一緒にると
罪悪感に押しつぶされそうになる。
ひろは自立した人が好きなんだと思う・・・けど、私は全然自立なんかできていないし、
ひろへの依存度がどんどん増している・・・・」


そして、ひろはこう言ったんだ。
「自立できない僕と、自立できない君。二人はお似合いじゃないか。」

「このまま一緒には居られない・・・」
振り絞るように私が言うと、ひろは「君を尊重する・・・」と言って、
こう続けたんだ。

「あのお部屋はずっと居てもいいからね。君のためのものだから。
君が心休まる隠れ家だから。ずっと居てもいいからね。」


そう、ちょうど前日の日曜日、不動産屋さんに行って、
新しい住処を探したんだった。
子供が遊びに来てもいいように、またひろが気兼ねしないようにと
1LDKのマンションを見に行ったんだ。
「引っ越ししようと思ってね。」
ひろに言いそびれてしまった。

住処、、、
ひろの借りてくれているこの部屋に留まるか。
新しい住処を探すか。
あるいは、子供たちのもとに戻るか。

不動産屋さんの担当はまだ若い店長で、30代半ばに見えた。
内覧に行く車中で、ちょっとした話になり、今の状況に触れた。
「家賃の上限ってありますか?」

「そうですね、、、そもそも私の場合、『我慢』さえすれば
家賃はかからないわけですから、当然抑えたいですよね。」

「そうですか、、、我慢ですか。あぁ、何か不安になってきたなぁ、、、」
結婚6年目という若い店長は苦笑いしながら頭をかいた。

「大丈夫ですよ。夫婦みんなの行く末じゃないですから!」
砂上の楼閣
土台の砂は罪悪感で出来ている。

そんなことを日曜日に感じた。
罪悪感は私をますます追い込んで、離さない。


昨日、ひろに会ってそのことを話した。

「何とかしなきゃいけないのに、何も決められず、このままだと
ひろへの依存度が増すばかり。それがとても苦しい。」

「どんなことも『なるようになる』ものだよ。」

「でも、誰かが何かしてくれるわけじゃない、自分で一歩進めないと。
私にはものすごく罪悪感があって、それが辛くてもうどうしようもない。
孤独に苛まれるのも怖くて、どうしたらいいのか分からないけど、
今は、こんな状態で私は、ひろと居るべきじゃないと思う。居ちゃダメだと思う。」

「・・・・・・
君が決めたことは尊重するよ。君がしたいようにすればいい。
いつか、君が僕と暮らせると時が来て、君がそうしたいと思ったら、
そう言って。それまで僕は待ってる・・・いや、待ってない。
待ってないから、何かあったらいつでも連絡してきて。
いや、何もなくても連絡してきて。僕は君が大好きだし、これからも
それは変わらない。死ぬ時も、君が好きだと思って死ぬから。」

そう、ひろは一気に喋った。
言葉を選びながら、でも、私が一言も挟めないまま。


ひろのこんな言葉を、私は引き出したかったのだろうか。
でも、これがひろの精一杯の優しさかもしれない、、、

そう思って、何も言葉を発せないまま、ひろと別れた。
ひろと『別れた』。
この数か月、私の心身の状態が底辺だからか、
ひろとの衝突が激しい。

私がどんな状態だろうと、ひろにはいつも大きく受け止めてもらえることを
望んでいるのに、まぁ、そんな都合が良いことが叶うわけはない。

私のイライラは、数倍になって返ってくる。
「この野郎、馬鹿野郎」という言葉が何度、私に投げられたことだろう。
その度に、やめよう、もうやめようと思った。

優しい時のひろと、そうでない時のひろは
多重人格者かと思えるほどに違う。
それがひろの限界なんだろう、、、



そんなことを繰り返し、繰り返し、
私が反省し、ひろが反省し、謝罪し、
でも、結局、二人に平穏なんて訪れない。
今、私が居るのは砂上の楼閣。
脆くて、危なっかしくてしょうがない。

子供たちを置いて家を出てはや数か月。
夫に離婚届を渡してはきたが、何のことはない、白紙のものだ。
自分の手で運命を動かすのが怖くて、咄嗟にそうした。

家を出て十日程して、様子を見に行った時には、
何にも変わらない、夫と息子二人の姿があった。

家を出た直接的な理由は、ひろに由来するものではない。
けれども、家を出るための大きな傘となったのは
ひろの存在に違いなく、またひろが借りてくれている部屋だった。

週に半分程、家の様子を見に行き、息子たちと
コミュニケーションをし、今後を模索した。
長男にははっきりと「ママについてくる?」とも聞いた。
「いや、今の生活を変えたくない」という答えが返ってきたが。



今、選択しなくてはならないことが山ほどある。
このままでいいことは何一つない。

仕事も組織の変更があり、雇用形態が変わる。
そのことが更に、今の状況を危うくしている。
これからの人生、自立なくして歩めないのだから。

夫とはこの先、人生を共に歩むつもりはない。
数年前に離婚の話をし、「子供たちが高校卒業するまで」を
条件に生活をしてきた。(予定が狂っちゃったけど)
だから、まだ離婚はしていない。
それは、子供たちのため、でもあるし、自分で決めることを先延ばしに
しているだけかもしれない。

そして、私の住処。
今、居るのはひろが借りてくれているワンルームだ。
当面の荷物は持ち出したが、全てとなると到底入りきらない。
キッチンはあるものの、調理器具もなく、洗濯機もない。
不自由極まりない、仮暮らしだ。
ひろは週末の一日をここで過ごすことはあるけれど、
落ち着かないのか、それ以上来ることはない。

私が離婚をし、子供たちが巣立った後なら、
ひろとの関係も変わるだろうが、今はどうすることもできない。


そんな毎日を数か月積み上げてきた。
何も決めることができず、一歩を踏み出せず、コソコソと。

脆い土台の上に、私の未来なんて作れない。
今、居るのは、やっぱり砂上の楼閣なんだから。
どこに向かっても壁にぶつかって、行き場を失う。
まるで袋小路だ。

選択肢は幾つもある(気がする)。
が、しかし、どの道を選んでも行き止まりが待っている。

道が一つしかないなら、覚悟も決まるが、
そうではないだけに、いつまでも宙ぶらりんだ。

絡まり合ってぐちゃぐちゃになった糸を今、
少しずつ解いていこうとしているのに、、、