FC2ブログ

姫日記

恋する気持ちを持ち続けていたい姫の日記です。

ヤバいです・・・

数か月ぶりに、いや一年ぶりくらいに体重計に乗りました。
体重が増加の一途をたどっていることは、分かっていたんです。
分かっていながら、止めることが出来なかったのです。

昨年のひろの入院から慌ただしい毎日が続いて
仕事を抱えるストレスで毎日のように食べまくっていたのは事実。
昼も夜もお腹いっぱいになるまで食べ、食後はデザート、
小腹が空いては、お菓子やパンを食べる・・・

そりゃ、太りますよ。

だから、体重計に乗るのが怖くて、乗っていませんでした。

近頃、服がキツイなとは思っていたんです。
キツくて、避けているワードローブさえあります。

ひろにお腹をつままれることはあったけれども、
「君はデブじゃないよ」の言葉に、安心しておりました。

全ては、私の怠慢です。
分かっているんです。

先月、エステに行った時に言われました。
「太りましたよね?膝にお肉が乗ってます・・・」

それで決意しました。

お昼を抜くのはなかなかできないので、
夕食はほとんど食べません。
食後のデサートもやめました。
間食もしません。

どうしてもお腹が空いたら、煎った大豆をポリポリ食べます。

そして、意識して腹式呼吸しています。
お腹がへこんだ状態を保つドローイングダイエットをしています。


そして、今日・・・
自分の真の姿を知るために、体重計に乗ったのです。

・・・結果は、悲惨なものでした。
こんな数字は見たことがありません。衝撃的です。

ひろと付き合い始めたころからすると、
確実に5キロは増えています。いや、6キロかも。


元に戻すのは厳しいですが、頑張ります。
こんなの、自分でも嫌です。


ひろと食べるランチも今までの半分にします。
おやつも食べません。




スポンサーサイト



夕方、仕事を片付けてから、ひろに電話した。

「何してるの〜?!」
甘えた声のひろ。

「仕事終わったの。・・・ひろの顔を見に行こうかな。」

「いいよ。」

ひろのお店はまだオープン前。
ひろはカウンターの椅子二つを使って足を投げ出して
iPadで映画を見ていた。

「今日の晩御飯はどうするの?お前、このまま帰るの?」

「うん。子供たち待ってるから。」

「何か持たせるものないかなぁ・・・何が欲しい?」

「欲しいもの?」

「そう。欲しいものは何?」

「欲しいのは、ひろ。」

「それは、おあずけ!」

「何だ・・・ケチ!!」


おあずけ、って久々に聞いた言葉だ。


「つまんないの〜。もう一回してあげる?」
ひろの下半身をチラッと見た。

「もう、勘弁してください・・・」
今日は生理中で体がだるく、また雨のために
気分がすぐれず、つい怠けてしまった・・・

朝、オフィスに向かったものの、駐車スペースがいっぱいだったことで
気分が萎え、そのままお部屋に行ってしまった。
急いでせねばならない仕事はない。今日中にやりさえすればいいのだ。


お部屋に着くとまず、掃除をした。
トイレもきれいにして、ひろにメールした。
「気が進まず仕事をやめにしてお部屋にいます。
ひろの都合がいい時に電話してね。」

ベッドに寝転がって、ネットでニュースを見たり
メールをチェックしたり、しばらく時間を過ごしていると、
ひろから電話。

お迎えに行き、ランチを済ませて再びお部屋に戻った。
外は雨・・・
ひろは下着姿で布団に潜り込んだ。

姫は何だかやっぱり気分がすぐれない。
ひろが甘えてくるのが少々鬱陶しい。(何と、贅沢な!)

ひろは耳かきをせがみ、姫の胸に抱えるようにして
そのリクエストに応えた。

寝息を立てて眠るひろを横目に、手持無沙汰の時間が過ぎる。
1時間以上経ったころ、退屈しのぎに、ひろを弄んだ。
なかなか反応しないことがつまらなくて
「あ〜私の可愛いペットちゃんは老衰しちゃったんだ・・・」
と呟くと、ようやくひろが反応し始めた。

だからそのまま勢いで、口に含んだ。

「あ・・・」女の子のように声を上げて、体をきゅっと縮めるひろ。
さらに大きく含んで転がすと、また声を上げた。

「出ちゃうよ・・・」
そして、手を添えてひろを最後まで導いた。

あっという間だった・・・

こんなにすぐにイッちゃうのは珍しい。

「恥ずかしい・・・」
ひろがティッシュで拭いながら言った。



「今日はありがとうございました。誰にも言っちゃだめだよ。」
恥ずかしそうにひろが言う。


「リハビリなんだから、いいのよ、恥ずかしがらないで。」



姫日記の中で「お部屋」と表現しているものについても
改めて、記しておきます。


ちょうど2年前の5月、ひろが姫のために部屋を借りてくれた。
ひろはお店の2階のにある事務スペースを無理やり
居住空間にして日常を過ごしている。
従って、ひろとお出掛け以外で長い時間を過ごす場所は
ラブホだった。

姫はそれが嫌で嫌で、仕方がなかった。
一緒に居る時間がセックスだけのためにあるようで
そのことに耐えられなかった。

セックスするためにひろと居るんじゃない。
もっと、日常を共に過ごしたかった。
それはひろも同じ思いだったと思う。

「部屋、借りるか?」

ひろがアチコチ探して、程よい場所にワンルームを見つけ、
賃貸契約を結んでくれた。
経済的な負担は申し訳ないけれど、ラブホに何度も行くのも
そう変わらないのではないかと思う。

それに、拠点が出来たことでひろと過ごす時間も
格段に長くなった。
ちょっとした空き時間にお部屋に行くこともあるし、
お互いが来るまで、お部屋で待つこともできる。

遠くに出掛ける時は、お部屋で準備をし、
お部屋に帰ってくると、ゴロゴロしてから
お風呂に入って、バイバイする。

数か月に一度は、お部屋にお泊りにも行く。
数日間、お部屋で、姫はひろのお店が終わるのを
好き勝手なことをして待つ。
電話が掛かってくるとお迎えに行って、深夜の食事をし
二人でお部屋に戻って、眠る。
そして朝、それぞれ仕事に出掛ける。


たまに、姫一人でお昼寝をすることだってある。
これはひろに内緒だ。

ベッドとベッドサイドテーブルと、小さな冷蔵庫だけの
小さなお部屋だけれど、ひろと姫の隠れ家だ。
この場に引っ越しをしてはや数か月。
整理をしながら記事を移すつもりが、そのままになっている。

なので、改めてひろと姫、二人のことについて記します。


ひろは還暦を過ぎてもうすぐ2年。
姫とは17歳離れている。

今のような関係になって、6年が過ぎた。
ひろはダイニングバーのオーナーで、バツ2の現在は独身。
20代のお嬢さんと息子さんがいる。

姫は17年ほど前、結婚を機に、関西から
こちらに移り住んだ。
思春期の二人の息子がいる。
夫との関係は、ひろと知り合う以前から破たんしていて
数年前に、話をして
「子供たちが高校を卒業するまで」という約束のもと、
現在も一緒に住んでいる。

3年ほど前に、ある事件が起こった。
簡単に言えば、姫の過信によるひろへの裏切りだった。
警察が介入する大騒ぎとなり、姫も、そしてまたひろも
信用を大きく失ったし、ボロボロになった。
そして、ある一人の男性をひどく傷つけてしまった。

あの時の、ひろがした行為の数々は今以て
償い切れていないし、暗黙の了解で触れてはいけないことに
ことになってはいるけれど、事態が収拾するのに、
一年以上を要した。

そのことで、姫の離婚に決定的に拍車がかかったのだけれど、
ちょうど義父が亡くなったために、そのままズルズルと来ている。
離婚用紙は手元にある。
夫が要求すれば、いつでも、姫は出て行くことになっている。


夫は姫とひろの関係を、その事件によって知ることになった。
しかも、ひろ自身の口から。


けれども、その後、事態が収束して、
再びひろと一緒にいることを姫が選択したことを、夫は知らない。
まさか、そうとは思いもよらないはずだ。


そして、今、ひろと姫は離れられずにいる。
おそらく、この先もずっと。





今日はひろの具合が悪く、随分遅い時間のランチになった。
高層ビルの中にあるFバーガーでの出来事。

ひろが突然ニヤリと笑ったので、知った顔がいるのかと
思って、振り向いてみたら・・・

そこには、今、まさに姫が仕事でお世話になっている
ある施設の館長がいらした。

その館長を姫が初めて知ったのは、もう5年程前のこと。
現在とは別の施設の館長をされていた時、
ひろとその施設を訪れた。

ひろはずっと以前から知り合いらしく、親しげで、
姫のことも半ばオフィシャルに紹介してくれた。
そこに立ち寄ったのは、平日の昼下がりで、いわば
ひろとのデートのようなものだった。

名刺を交換し、少しばかりお話をした記憶がある。

その方が、同じ分野の違う施設に異動になったことは
ひろからも聞いていたし、また、仕事柄、耳にも入っていた。

つい、2週間ほど前、その施設に関わる仕事をすることが決まって
ご挨拶を兼ねて、打ち合わせをした。

「こんにちは。○○と申します。随分以前にご挨拶をさせて
いただいたことがあるんですが・・・」
姫がそう切り出すと、館長が答えた。

「覚えていますよ。よろしく・・・」


そして、その仕事の関係でつい先日の日曜日も
その館長にお会いしたばかりだった。




そのことは全部ひろにも話していたのだけれど
ひろは立ち上がって、
「○ちゃん!」と、館長の名を親しげに呼んだ。

姫は背中を向けて、じっと静観していた。
だって、気まずいから・・・

すると、館長は近づいてきて、こう言った。
「こないだ、○○さん(姫のこと)がいらしてね・・・」

その言葉に、ぎくりとして、覚悟を決めて振り返った。
「色々とお世話になっております。」


その時、ひろと一緒にいたのが姫だと気付いていたのだろうか。
いや、姫は背を向けていた。

「あいつから、君のことを言ってきたぜ。
何で僕と君が関係あるのか知ってるんだろう。」
と、ひろ。

つまり、その場にいた姫には気付かず、ひろの顔を見て
姫の名前を出したということ。

ひろと姫がセットになっているということは
もう5年も前のあの日のただ一度きりのこと。
それは相当な記憶力としか言いようがない。

まぁ、姫の苗字は割合、珍しいので

そのせいかもしれないけれど・・・


とにかく、びっくりしたし、焦った。
「恥ずかしかったよ・・・」

「僕も。」


真相は謎である・・・
土曜日も日曜日も一緒にいた。

一日中ではないけれど。

土曜日は早い時間にひろのお店に予約が入っていたので
午後2時まで。
日曜日は姫の仕事が入っていたので同じく午後2時まで
一緒に過ごした。

生理前のイライラで怒りっぽい姫に対してさえ
ひろは怒らない。
ワガママガ過ぎたことを言ったとしても、許してくれる。

昨日、何がきっかけだったか忘れたが、
ひろに対してワァワァと、姫が文句を言った。
文句と言っても、「そんなんじゃ、だめだよ!」的な
ことだったような気がする。

すると、ひろが穏やかに言った。

「ねぇ、この部屋には今、僕と君しか居ないよね。
しかも、この距離に居るのに、どうしてそんなに
大きな声を出すの?」

その時、ひろと姫はベッドに寝転がっていた。

「もうっ!じゃあ、もう何にも言わない!
何か気付いたことがあっても知らんぷりしとく!!」

すると、ひろは微笑みながら
「君は可愛い人だね。」
と言って、キスをしてきた。


ひろの堪忍袋はとてつもなく大きくなったようだ。


しか〜し、油断は禁物。
ちょっとした油断と傲慢が
ひろの俺様スイッチをONにする。
昨日、ひろの聞いてみた。

「ねぇ、ねぇ、こないださ、姫がイライラしている時
『もうどうしたらいいか分かんない』って言ったじゃん。
そしたら、ひろは『また、お話ししようね』って優しく
言ったでしょ。
前にさぁ、同じように・・・・・・」

以前、『まず、寝ることなんじゃない』と言われたことを
ひろに抗議すると、

「それは、冷たいね。」

「でしょ、冷たすぎるよね。」

「僕がそんなこと言ったんだとしたら、ごめんね。」

「なぬぅ〜!!」

「僕はそんなこと言った覚えはないんだけどね。」

「ったく、自分に都合が悪いことは全部忘れちゃうのね!」

「そうそう。」

「でもさ、ひろが言いそうなセリフでしょ?いかにも。」

「うん。いかにも言いそう。」

「ほら!」


ひろがはにかむ。
病気はひろを激変させた。

毎日のささいな言葉や態度でそのことを感じる。


昨夜、姫は子供のことでイライラしていた。
ひろがお店を閉めたと電話をくれた時、姫は相当
沈んだ声をしていたと思う。

「どうしたの?」
優しく丁寧に、姫を気遣ってくれるひろに
イライラの原因ついて話をした。

ひろなりの意見も言ってくれ、たまらず姫は
涙が溢れてしまった。
涙声で「もうどうしていいか分かんない」と言うと

「明日、仕事が終わったら電話してきてよ。
また話をしようね。」
とひろは答えた。

電話を切った後、ふと思い出した。


去年、まだひろが病気になる前のこと。
同じように、姫がイライラして電話で涙したことがあった。
同じように「もうどうしていいか分かんない」と言うと

ひろはとてつもなく冷たい声でこう言った。

「まずは寝ることなんじゃないの?」

あまりのショックで
「・・・そうだね」と
振り絞るように答えるのが精いっぱいだったことを覚えている。

慰めも何もなく、ただ冷たい言葉に
布団をかぶって泣いたことを思い出した。


まったく同じシチュエーションなのに・・・
こんなに違う。


あの冷たい俺様のこと。
今でも時々思い出しては、胸が痛くなる。
先日、ひろとデパ地下を歩いていた時のこと。
ひろが懇意にしている老舗洋食店の息子と出会った。

彼はイタリアンレストランを去年オープンさせている。

その彼に、ひろが耳打ちした。
「・・・またアレ、日を決めて連絡するから。」
「はい、ぜひ。」

去年ひろが入院する前に、そのお店でひろの誕生会を
することが決まっていた。
ひろが持っているワインをみんなで飲もうと計画
されていたようだが、詳しくは分からない。

耳打ちの後も、ひろは何にも言わなかったので、
姫も何も聞かずにいた。
たぶん、去年の誕生会の仕切り直しなんだなと、直感した。

そして、一昨日のこと。
ひろがこう切り出した。

「Kで、あ、あの息子の店で、今度ワインを開けるんだ。
一本何十万もするワインなんだけど。
日曜のお昼だったら、君、いい?6月の。」

「うん。」

「それでさ、TちゃんがMにあるものすごいフレンチに
君と僕を招待してくれるって言うんだ。6月だけど。
昼ならいいよって、言ってある。」

Tさんは色々とお世話になっているバーGのママ。
ひろが倒れた時、救急車で付き添ってくれた方だ。
姫も何かにつけ、助けていただいている。
ひろとは30年来の仲である。

「え?何で?!」

「全快祝いとか、何かだと思う。」

「何で、姫も?そんな・・・いいよ、姫は。」

「Tちゃんが、君もって言うんだよ。」

「えー・・・いいの?姫も?」

「もちろんだよ。君がいないと、僕が困る。」


・・・こんなこと、今まであっただろか。
去年だったら、姫に声が掛かっただろうか。

嬉しかったけれど、去年までのことを思うと
ちょっと複雑な気持ちにもなった。

病気は、ひろを本当に穏やかにさせた。
まるで、別人のよう。

傍若無人な俺様は葬り去られたのか・・・
「今日のお昼は何食べたの?」

ほとんど毎日、ひろとお昼ご飯を食べるけれど、
金曜日だけは、姫の仕事の関係で別々になる。

朝からの仕事をいったん終えて、午後3時ごろ
ひろとお茶をしながら、聞いてみる。

「今日のお昼は僕が作った。」

聞くと、冷やし中華、玉子豆腐、ところてんだと言う。

・・・何という取り合わせ!


「錦糸卵も、キュウリも焼き豚も細く切ってのせた。」

「錦糸卵も自分で作ったの?!」

「ううん、K子さんが作っててくれたから。使ってもいいよって。」

K子さんはひろの妹さんで、お店の厨房を任されている。

「K子さん優しいね。奥さんみたいだね。
姫なんて、必要ないね。」

「馬鹿言って・・・僕は君を怖いと思ってるんだけどね、
k子さんはステージが違う怖さなの。
君の怖さは僕にとって可愛いもんなの。
K子さんのは、本物だから。そりゃもう怖いんだから・・・」

「お世話になってるんだから、そんなこと言っちゃダメ!」

「・・・マジに怖いんだよ。」


というけれど、ひろはお兄さんや妹さんに随分と
助けられている。
そんなこと言ったらバチが当たるよ。

ひろの兄弟を見ていると、仲がいいなぁと
いつも羨ましくなる。

姫の実家の家族は完全に崩壊しているから・・・
昨日のこと。

数日前にホテル(注:シティホテル)の駐車場で
Y氏を見かけたことを書いた。
そのY氏から、メールが届いた。
”突然ですが、今日かあさって、飲みに行きませんか?”

昨日の午前9時過ぎのことだった。

お誘いは嬉しい。
けれども、色々な面倒もある。
いや、面倒のほうが多い。

Y氏はとある企業の社長さんで、ひろのお兄様と同級生。
おしゃれで、お若く見えるし、とてもスマートな紳士だ。
姫を女性として見てはいるだろうけれど、
そこにいやらしさはなく、しいて言うなら
『年の離れた異性の友人、あるいは後輩』といった
感じだろうか。

姫としては光栄だし、話もそれなりに楽しいし、
計算高く考えれば、そういう方と親しくするのは
メリットもあるし(すごくいやらしい表現だ・・・ゲンナリ)

まぁ、深くは考えていないけれど、姫にとって
マイナスなことではないので、Y氏と会うのは嫌ではない。

・・・ただ、ひろだ。

色々考えて、メールを返した。
”突然ですね。今日は子供たちの夕食の支度をしていないので
難しいです。水曜日なら良いのですが、今、お酒を控えているので
食事しかお供できないですが・・・興ざめですよね。”

お酒を控えているというわけではないけれど、
ひろはずっとお酒を飲まないので、姫も飲まない。
会社の宴会などでも、この一年、ほとんど飲んでいない。
それに・・・アルコールが入ると入らないでは
ひろの感じ方も変わってくるだろう。
姫がセーブしているのが伝わるはずだ。

そんなことを考えて、胃がキリキリと痛んだ。
私って、何やっているんだろう・・・

ランチの時、ひろに話した。
黙っていようかとも思ったけれど、やっぱりそれはできなかった。

「あのね、Yさんから連絡があってね・・・」
事情を一通り話して、確認してみた。

「怒る?」

「怒りませんよ。姫さんのすることに、怒るわけがない。
行きたいんでしょ?」

「いやいや、面倒のほうが大きいよ。行きたいというより、
断るのが申し訳ないし、ひろのこともあるし、何か
後ろめたい気持ちもあるし、で、色々考えてこんなふうに
返事したの・・・」

そして、返事の内容を話した。すると・・・

「パーフェクト!!君は完璧だ。」
そう言いながら、テーブルの向こうからキスをする仕草をした。

「ほんと?!」

「ほんとだよ。相手を立ててるし、ちゃんと距離感を
取っているし。完璧だ。」

「ほんとに?良かった~ヤキモチやかない?」

「やかないよ。」


というわけで、明日、Y氏と食事に行く。
あまり遅くない時間に切り上げて、
ひろの元へも行こうと思っている。

明日は、露出のない洋服で、地味に・・・
ひろに対して、時々、何だかなぁ~という思いを
抱くことがある。

大したことではないし、それを指摘したところで
改善するわけでもないし、ひろらしいと言えば、
ひろらしいことで、どうでもいいことなので放置していること。


大抵の男性はプライドが高いけれど、
ひろはその比じゃない。
エベレストより高くそびえ立っているのだ。

で、そのプライドのせいなのか、
ひろは自分が知らない、出来ないということを
極端にカムフラージュする。

例えば、
姫:「すっごく美味しんだよ、これ、食べたことある?」

ひろ:「たぶん・・・あると思う。」

↑絶対、食べたことないのに、そう言う。

旅行の話などをしていて・・・
姫:「・・・って、すごく綺麗なとこなんだよ。行ったことある?」

ひろ:「たぶん・・・知ってる。」

↑たぶん、って・・・何よ。


で、今日のこと。
本屋さんにあるカフェでお茶を飲もうとしていて、
一角にWindows8の攻略本が何種類も積み上げられていた。

ひろ:「まだ、こんな本売ってるの?」

姫:「え、だって、Windowsは今、8だよ。
次々新しくなるから、OS使いこなすには必要なんじゃないの?」


ひろ:「よく分からんけど、僕、仕組みは分かってるんだ。」

姫:「何の?!」

ひろ:「パソコンの。」

姫:「だったら、やればいいじゃん。」

ひろ:「コレができないだけ・・・」
(キーをたたくジェスチャーをする)

姫:「そんなの、やってみれば何とかなるし。」

ひろ:「分かるけど、やらないだけ。」


↑・・・・ったく、滅茶苦茶だ。
支離滅裂な言い訳や、理由、ゴタクを並べてないで、
シンプルに「へぇ、知らないなぁ」、
「行ってみたいなぁ」、「やってみたいなぁ」
と言えばいいのに。


それでいて、わざと知らない振りをする時もあるのだ!
知っているくせに、「僕は、それ知らないなぁ。」
「聞いたことがないなぁ。」
知っているくせに、意地悪に姫を窮地に追い込んで
ひろの価値を上げようとする。


ひろを軽蔑するようなことを書きましたが、
決して、軽蔑しているわけではないんです。
ホント、何だかなぁ~ってカンジ。

ひろらしい、ひろの弱点の一つです。
これが」克服されれば、もっと素直で紳士な人になるのに・・・


以上、どうでもいいことでした。
何だかやたらとイライラしている。
生理前だからなのか、更年期だからなのか、
このところ忙しいからなのかは分からないけれど。


今日、お昼前にひろと会った。

お部屋の近くのデニースでランチする。
ひろがボウルに入ったスープをスプーンを使わずに
直接口をつけて飲んだのが気に入らなかった。

「スプーンがあるのにさ、口をつけて飲むなんて
お行儀が悪いって、教わらなかった?」

「君はスプーン使わなくていいの?」

ひろは姫のコーヒーカップのソーサーに置かれている
スプーンを指さした。
「これはかき混ぜるために使うの!」

「君、今日は絶好調なの?」

「別に。」


お部屋に行くと、ひろはベッドに入るなり
目を閉じてあっという間に寝息を立てて眠った。
・・・あっという間に!


それが気に食わなくて、眠りの邪魔をしてみた。
スリスリとひろの股間を触り、反応したそれを
さらに撫でてみた。

すると、ひろが言った。
「何してるの?」

「別に。」


「・・・ちょっと入れてみる?」

その言い方が気に食わなくて、

「入れなくていい!」
と、強がってみた。


しばらくしてひろは再び眠りに落ち、
2時間ほど経過した。

姫のイライラもピークだったのだろう。
なかなか目を覚まさないひろにあれこれと
ちょっかいを出して意地悪をした。

目を開けたひろに、意地悪なことも言った。
「僕のことそんなに好きなの?」

「全然。何で?」

「嫌いなの?」

「嫌い。」


そんなやり取りが1時間ほど続いた。

まどろむひろがポツリと言った。
「僕は君のことが大好きだよ。
だから、”何で”とか言わないで。
僕、悲しくなっちゃう・・・」



ごめんね。
だって、イライラしてるんだもん。
今日、ひろとランチ後、コーヒーを飲もうとCホテルに向かった。
駐車場に車を進めると、ひろが言った。
「Yさんだ・・・Yさんだよ。」

見ると、すぐ横を歩く男性の姿が。

Yさんは去年、ひろのお店でたまたま知り合った男性で
その晩、姫を誘ってくださり、ただほんの一杯
お付き合いしただけなのだけれど、ひろがひどく嫉妬をして、
大変だった。

その後も、一度だけ食事をしたのだけれど、
当然、ひろは面白くないわけで、後が大変だった。

そんなYさんから、二か月ほど前、一年ぶりに連絡があった。
連絡とは言っても、メールだけれど。
また、飲みに行きましょうというライトな内容のメールだった。


当然、Yさんは、姫とひろの関係を知らない。
姫から申告するようなことではないし。


だから、ひろとこんなふうに一緒のところを見られるのは
少々面倒だった。
姫のことは忘れているかもしれないけれど、
ひろを見かけると挨拶をしてくるはずだ。

そんな時、姫はどう振舞えば良いのか分からない。
知らない振りもできない。

「別のところにしようか。車、出そう・・・」
ひろも同じことを考えていたのか、そう口にした。


コソコソすることではないのだけれど、
何か、バツが悪いし、Yさんだっていい気はしないだろう。


何で遠慮する必要が、とも思ったけれど
不要の面倒を起こすのも嫌だった。


・・・仕方ないか。
冬物をまだ片付けていなくて、
どうしようもないけれど、手につかず・・・


だから、姫日記の衣替えをしてみた。
イマイチかな・・・
ひろの体調は一進一退。
不調ではないけれど、以前のような元気さはない。
セックスもまぁ、それなりだし・・・


したい、という気が起きないわけではないらしいけれど、
色々と気になることが多すぎて集中できないように感じる。


姫への愛情は変わらず溢れんばかりに注いでくれているので、
悲しくはならないが、欲求不満には陥る。


「気持ちいいことはいつも途中までだから。」
マッサージを途中で切り上げたひろに言った。


「ごめん。」


今日、久しぶりにひろとセックスした。
「今日はめくるめく官能の世界へ連れて行って
くれるのかなぁ・・・」


「そんなの簡単なことだよ。」


というわけで、一通りのことを終えて
姫の欲求不満はかなり解消された。

「月まで行っちゃった?」


「月までは行かないなぁ・・・
ま、ちょっとそこまで、って感じかな。」


姫はひろの専属ヘルパーだ。

「行きたいところがあるんだ。」
と、ひろに言われてついてきたところは
郊外に新しくオープンしたというスポーツバー。

ひろが長年、可愛がっているという男の子(30歳くらい)が
念願のお店を持つことになったという。

行くと、随分賑わっている。

「仲間ばっかりっすよ。」

オープンを祝ってか、友人知人が集まっているようだ。
その皆が次々に言う。

「ひろさん、お世話になってます!!」

ひろは若い子にとても慕われている。

遅れて、同じく男の子が入ってきた。
「おぉ、ひろさん!」

ひろの姪っ子の旦那さんだという。
その彼が言った。

「ひろさんの彼女?」

「え、彼女のこと?あぁ、彼女は僕のヘルパー」

「あはは・・・」

若い男の子に囲まれて賑やかなひと時を過ごした。

「意地悪爺さんだと思いませんか?」
姫が男の子たちに聞いてみた。

「え~、じいさん、っすか?」

「そう、しかも意地悪爺さん。」

「そんなことないですよ。僕たちの師匠ですから。」

「みんな、騙されてる・・・」

そこで、ひろが姫に言った。
「僕のこと、嫌いなの?」

「ううん、好き!」

「結局、そこっすか・・・」
男の子たちが笑った。

彼らに、ひろはお酒の飲み方、遊び方を指南したらしい。
ま、いいかげん道の師匠というわけだ。
今日、Surfaceを買った。
そもそも姫が普段使っていたノートPCは
会社で使わなくなったものを勝手に借用していただけ。

しかも、熱を持ち過ぎて突然フリーズしてしまう。
いつ壊れてもおかしくはない状態だった。

長い原稿を作成している途中に落ちてしまって
何度叫んだことか・・・

自宅でPCをフルに活用することもないし、
元来、アナログ人間だし、ノートを買う気には
なれなかった。
かといって、PCがないってのも困るし。

去年ひろの誕生日にプレゼントしたiPadは
姫が使うことはほとんどないし。
同じiPadを買うのも何かもったいないような。

で、半年ほど前からずっと迷って迷って
姫が主に使うのはやっぱりOfficeかなということで、
Surfaceに傾いていたのだけれど、
なかなか決め手もなく・・・

で、今日、フラッと立ち寄ったビックカメラで
衝動買いしちゃったのだ。


よっぽどストレスたまってたんだな、私って。

連休はひろと会えないだろうし、新デバイスを
頑張って覚えることにします!
ということで、これはSurfaceにて入力。

明日は早朝から仕事。
あさっては、まつ毛エクステを予約した~
長々とすみません。

去年の6月、ひろが倒れ、
そのことをきっかけに大きな病気が発覚しました。

まさに、「不幸中の幸い」。

吐血の原因を調べるために全身を検査した。
吐血の直接の原因は胃の潰瘍が破裂したことだった。

しかし・・・
全身の検査で全然別の大きな病気が見つかった。

去年の7月末に8時間にも及ぶ大手術をして
1ヶ月以上入院した。




去年の6月から、そんなこんなの
病気生活が続いている。

随分回復もしたし、病変は取っちゃったので
身体的には健康なんです、今は。(たぶん。)
(2012年6月16日の記事)

ひろが退院した。
けれども、これから向き合っていかなきゃ
いけないことがいっぱいだ。

「金曜日に退院する」とは聞いていたけれど、
帰ってきたら連絡してくれるとか、
会うなどという約束はしていない。
期待半分、諦め半分、待つとはなしにひろからの連絡を待った。
仕事終わりのミーティングの後、スタッフと雑談中
ひろから電話が入った。

心の中で歓声を上げ、満面の笑みを浮かべた。

「僕ね、もう退院してお店にいる。」
姫がもう仕事が終わったことを告げ、ひろと落ち合った。

車でホテルKに向かう。
金曜日はこのティールームでお茶を飲むことが多い。
ひろとここに来たのは2週間ぶりとなる。

奥のテーブルに並んで座った。
「紙とペンある?」
ひろが姫に尋ねた。
「紙?」

ごそごそとメモを取り出そうとすると、ひろが言った。
「君に説明しておこうと思って・・・」

その言葉で身体がこわばった。
そしてメモではなく
スケジュール帳のノート欄を開いて、渡した。

「僕の病気のこと。聞きたくない?」
「・・・」姫は黙って首を横に振った。

「泣いちゃだめだよ。」ひろの表情は穏やかだ。
そしてひろはノートに図を描きながら
事細かに説明をしてくれた。

その説明はあまりに衝撃的で、姫は言葉を失った。
ひろの表情は相変わらず穏やかで、
今後のことについて聞かせてくれた。

「そういうことだから。」

「姫はそばにいてもいい?いて欲しい?」

「いいさ。いて欲しい。いてくれる?」

「うん。」

「姫は必要?姫がいてよかった?」

「良かったよ。君がいなかったら・・・」
ひろは気丈だった。

「・・・君は綺麗なんだから。
だからいつも綺麗にしていなさい。
綺麗な人は綺麗でいる義務があるんだよ。
輝いていて。僕も輝くから。」

そう言われて、我慢していた涙があふれこぼれた。

「泣いちゃだめだって・・・」
ひろは指で涙を拭ってくれた。


楽観はできないけれど、ひろはこんなにも気丈なんだもの
悲観なんてしない。姫はひろと生きていく。
今は、強くそう思っている。
(2012年6月7日付の記事)

大きな総合病院の正面玄関を入り、キョロキョロする。
バッグの中で携帯が光ったので出ると、ひろからで
まっすぐ進んで売店のほうに来きてくれとのこと。

どんな様子か不安で、そして姫はどんな態度をすればいいのか。

しばらくしてカラコロと点滴のポールを引きずってひろが現れた。
「情けないだろ・・・」
病衣姿のひろは一回り小さく見えた。
げっそりと目が落ち窪んでいる。

「心配だった?」
「心配だったよ。死んじゃったかもしれないって。」
「僕も。死んじゃうかもって思った。君、涙ポロポロって。」
「うん。どうしていいか分かんなくて、お店に行くしかないって。」
「35、6歳の女の人が来て、涙ポロポロ流してって言うから。」
ひろの妹さんが告げたのだろう。

「アハハ・・・」
「歳は違うけどなって。35、6歳だって!!」
「姫だと思った?」
「思ったよ。」
「そんなの分かんないじゃない!他の人かも。」
「お前しかいない・・・」

思っていた以上にひろは元気だった。
元気なフリをしているのかもしれないけれど。

「もう痛いとかないの?」
「今はないよ。腹減った。」
「ばか!」
「トンカツとトンテキを一緒に食いたい。」
「もう、バカだ!」
他愛ない話をした。

そして、ひろが倒れて吐血した時の状況を説明してくれた。
救急車の中での大量の吐血はそれはそれは凄まじかったらしい。
ひろの甥っ子はレスキューなので、情報が入ったようだ。
「あの大量出血で死ぬ人もいますから、って医者に脅された。
葬式に行ってて良かった。あれが店の2階なら、僕、死んでたね。
今はずいぶん良くなったけれど・・・」

そう言ってひろは指を姫に見せた。
手のひら、特に指先は血の気が全くない。
青白い指だった

「どうして?何で?」
「血圧が下がってるからだ。もっとひどかったよ。だいぶ戻った。」

そして明日の検査のこと、今分かっていることを姫に詳しく
話して聞かせてくれた。

「メソメソしないね?大丈夫だね?何の情報もないと不安だけど
もう、安心しただろう。」
「うん・・・死んじゃわない?」
「死んじゃわないさ。」
「死なないで。」
「死なない。死ねないよ。」

ひろは姫の頭を優しく包むように撫でた。

「僕から連絡したのは君だけだよ。唯一。
あとは全部救急隊だから。偉い?」
「ありがとう。嬉しい。」
「そういうわけで、連絡したくても出来なかったんだ。
しばらく待って。10日くらい。待てるね?
電話出来る時はするから。
だから、君はいつも僕と居て出来ないことをやりなさい。」

「そんなのないもん・・・」
「ないのか?」
「あ、あの人と、あの人と、あの人とデートするくらいかな。」
「何だ、3人か寂しい奴だなぁ。」
「今のは例だから。もっといっぱいいる!」


さぁ、と立ち上がったひろの肩は
すっかり丸みがなくなり骨ばっていた。
そんなひろの肩に後ろからそっと触れる。
「痩せただろ。」
「つまんない。」
「だろ?これからは食べたいものを我慢せず食べる!」
「バカ!」

エレベータが閉まる寸前、寂しげな顔をした姫に
ひろは同じように寂しげな顔で投げキッスをくれた。
口角をほんの少し上げて、手を挙げることしか姫には出来なかった。
(2012年6月6日付の記事)

ふらふらとお店を出て、バーGのママに電話をした。
ママなら何か知っているんじゃないか・・・そう思った。
先週の水曜日もひろと二人でGに行ったばかりだ。
ひろとママは30年来の仲。信頼関係は厚い。

「あの・・・姫です。今、近くにいます。
少しだけ行ってもいいですか?」

「いいわよ。」

オープン前の忙しい時間にもかかわらず、
ママは姫を迎えてくれた。
「すみません・・・」
「ひろちゃん?」
「はい・・・連絡が取れなくて・・・」
「ひろちゃんが入院してるのは知ってるわよね?」
「え?!」
「知らないの?」
「・・・・・」あふれる涙を堪えることが出来なかった。

「ひろちゃん、連絡してないの?」
「はい・・・連絡が取れなくて・・・今、お店に行ったら
K子さんがいらして、聞いたら”外国に行ってる”って。」
「アハハ・・・そんなこと行ったの?意地悪ね。」

そしてママは話してくれた。


土曜日、ひろはお葬式の会場で具合が悪くなり
自分でタクシーを呼んで、先週かかった内科に行ったという。
「お腹が痛い」と。
そこで吐血をし、ひろの携帯からひろの指示に従って
病院が妹さんに連絡をしたけれどつながらず、
ひろが「Tちゃん・・・」と口にしたので、
ママT子さんに連絡があったらしい。
救急車が呼ばれ、ママはひろに付き添って総合病院へと向かった。


「何かあったのかと思って・・・土曜日のお葬式の前に
電話で話したんです。それでまた電話するね、って。
思い当たることは何もないし、心配で心配で。」

「そりゃそうよね。ひろちゃん連絡してないの?」
「はい。メールも、電話も。」
「そう・・・心配させるからだろうね。
ちょっと、K子さんに今電話してあげる。」

ひろの妹さんにその場で電話をして、詳細を聞いてくれた。

騒ぎが大きくなるから、とにかく内密に、
”外国に行った”ということにしておいてくれ、と
ひろから指示があったらしい。誰にも言うな、と。
ひろは街ではかなり知られた存在だ。噂にも数多く上る。
入院となったら、色々と面倒もあるだろう。

「今、女性が来たけど、そういうことで、”外国に行った”
ということで、統一しているから。」とのこと。
今、色々と検査中で、お見舞いとか
そういう状態ではないということ。
意識もあるし、元気です、とのこと。
・・・だった。

「でも、姫ちゃんに連絡してもいいのにね。
ちょっと、今、ひろちゃんにメールしてみるね。
返事が来たら、"姫ちゃんに連絡してあげて”って送るね。」

「はい。ありがとうございます。また、何か分かったら
知らせてください。お願いします。」

「元気出してね。大丈夫だから!しっかりして!」
ママに背中を押され、Gを後にした。

とにかく、ひろは生きている。
そこにいる。
安堵と衝撃が一緒になって、姫の鼓動は激しさを増した。

(2012年6月6日付の記事)

夕方になるまで苦悶の時を過ごした。
大きな仕事を抱えていて、逃げ出すわけにもいかない。
必死の集中力で、仕事を片付けた。

4時を過ぎてどうにも耐えられず、オフィスを後に。
ひろのお店に近づくにつれ、どんどん怖くなっていった。
「もう!どうして連絡してくれないの!心配するじゃん!!」
「どうしちゃったかと思った・・・・」
心の中でひろへの言葉を練習した。

閉まっているとばかり思っていたお店の外ドアは開いていた。
中ドアを押してお店に入る。薄暗いカウンター。
いつものカウンターだ。
人がいないと、ひっそりと寂しい影を落としている。

奥に気配がした。物音もする。

意を決して厨房に入ると、作業をする女性がいた。
ひろの妹さんだ。普段から厨房を仕切っている。

「あの・・・すみません。Sさんは?」
「いないんですよ。」
「あ、えーと・・・連絡が取れなくて。どちらに?」
「外国に行ったんです。」
「外国?!」
「そうなの。用事があってね。」
「前から決まっていたんですか?」
「急に行くことになったの。だから私たちも困ってるの。
予約が入ってるから。予約だけこなしてくれって言われて。」
「そうなんですか・・・」

あまりに衝撃的で、でも、死んじゃってたわけじゃないという
安堵感から涙がポロポロとこぼれた。
「大丈夫?」
「はい・・・大丈夫です。連絡が取れなかったから、
どうかしちゃったのかと思って・・・
だから・・・外国ってどちらに?」

「ブラジルに。」
「いつ帰ってくるんですか?」
「それが分からないの。」
「・・・」
フラフラと立ってさえいられなくなった。

「分かりました・・・ありがとうございます。」
「あの、お名前を。」
「いえ。」
「お名前だけでも・・・」
「いえ。大丈夫です。すみませんでした。」

困惑の表情を浮かべる妹さんがメモを差し出したのを
振り切ってお店を出た。
涙が止め処なく流れた。

どうして?どうして?
どうして、何にも言ってくれないの?
何があったの?
どうして?どうして?


ひろの妹さんは姫と直接面識はない。
お店のカウンターでひろと並んでいたり、
親しく話している横顔を少し見ている程度だ。
そんな女性はこのお店には五万と来る。

しかも姫は先週バッサリ髪を切ったばかり。
ずいぶん印象が変わった。
うっすら姫のことを認識できたとしても、
イメージが重ならないだろう。
(2012年6月6日付の記事)

悪夢のような日曜日を過ごした。
ひろの電話がこんなにも長い時間つながらない、
電源が切れたままというのは、あり得ない。
とても考えられないことだ。

たとえ、お店を休みにしても電話には出る。
予約の電話だってかかってくるからだ。
セックスの途中でさえ、電話には出るのに。

お店の電話にもかけてみたが、つながらない。

腹立たしい、悲しい、切ない気持ち以上に不安が増大した。
倒れていたら・・・事故にでも遭っていたら・・・

眠れぬ夜を過ごし、月曜日の朝を迎えた。
朝起きて、少しして電話をしたけれど
「電源が入っていないか・・・」の
アナウンスが流れることに変わりはない。

重い気持ちのまま仕事に行った。
お部屋の駐車場にいつも車をとめるので、お部屋に上がってみた。
何か痕跡があるか・・・そう思ったけれど、何もなかった。

オフィスに行って、真っ先にしたこと。
それはオフィスの電話からひろの携帯に電話すること。
けれど、結果は同じだった。番号は選ばれていないわけだ。

月曜日も「お葬式に行く」と言っていた。
だから、どこかに出掛けていたとしても
11時には帰って来ているだろう。
11時を待って、電話した。・・・・やはり結果は同じ。
電源が入っていない。

心臓が激しく鼓動し、指先が震えてきた。
どうしたんだろう、どうしたんだろう・・・

午後になっても同じだった。
この時間に、誰からの電話に出ないのは、絶対におかしい。
あるいは、今日もお店を休むつもりなのか。

夕方5時には確実にお店にいるはずだ。
まず、訪ねてみよう。それから考えよう、そう決心した。
(2012年6月4日付の記事)

土曜日の夜、ひろから電話はなかった。
お店が忙しかったんだろう。グッタリしているんだろう。
だから姫もひろに電話もメールもしなかった。

日曜日には会える、何となくそう感じていたから。

日曜日の朝、のんびり起きて洋服を選び、お化粧をした。
いつ、ひろから電話が掛かってきても良いように。

11時半、そろそろかなぁと思ったのに連絡はなかった。
会えないなら、ひろからは必ず連絡が入るはずだ。
”今日は忙しい。”とか”予定が入った。”とか。

なのに、何の連絡もなかった。
不安に思いながら、正午過ぎ意を決してメールした。
”ひろから連絡があるかなぁと思いながら
お化粧をしていました。
今日は忙しいのかな・・・じゃあ、またね。”
姫なりに言葉を選んで送った。

10分経っても、15分経っても、電話もメールもなかった。
自転車で遠出してるのだろうか、
それとも携帯を紛失しちゃったり、
不測の事態なのだろうか・・・
考えれば考えるほど不安がよぎる。

午後1時前、電話をした。
一瞬、繋がった直後に切れた。
再び掛けるとマナーモードに変わる。

すでに頭はパニックだった。作為的だったからだ。
確実にひろが操作している。

数十分後、もう一度メールした。
何か取り込み中なのかもしれない。
それなら簡単な返事がくるだろう。

”何かありましたか?どうしたの?
とても不安です。連絡して。”

けれども返事はない。
動悸が激しくなり、手が震えてきた。
もう一度電話をしてみてもマナーモードのまま。

しばらく色々考えた。
姫はひろに対して何か気に障るようなことをしただろうか。
ひろに避けられるようなことをしただろうか。
考えてみても何も心当たりはなかった。
金曜日、ひろはあんなにも優しかった。
昨日、恥ずかしそうに電話してくれた。何も思い当たることはない。

もう一度メールする。
”何があったの?ただ電話に出られないだけ?
お願い、電話して”
すでに、姫の心は引きちぎられそうだった。

けれども、その後も何の連絡もなかった。

夕方、電話を掛けてみるとマナーモードではなく、
電源が切られていることを伝えるメッセージに変わっていた。

衝撃的だった。
姫の電話にだけ出ないのかもしれないと、
他の番号からも試したけれど、結果は同じ。


数時間、胸が張り裂ける思いで過ごした。
過ごしながら、何故なんだろうと考えた。

「電源が入っていないか電波の・・・」機械的なメッセージを
何度も聞くために、何度も何度も電話をした。

そして午後9時を過ぎ、もう一度メールをした。
”何かあったの?とてもとても心配です。
ただお出掛けしているだけならいいのだけど。
メールを見たら、いつでもいいから電話してきてください。”

姫に「行かないで」と言われるのが面倒だから
何も言わずに遊びに出掛けたんだろうか。
それとも、姫を突然嫌いになったのだろうか。

もう、何もかも分からなくて、
何度も何度もメッセージを聞いた。
(2012年6月4日付の記事)

金曜日の夜中1時半、メールが来た。
”力尽きた・・・寝る。おやすみなさい。”

姫はちょうどDVDを観ているところで、すぐ電話した。
「今、DVD観てたの。悲しい映画で・・・
あともうちょっとで終わるんだけど、終わりたくないような、
最後を知りたいような・・・」

「じゃあ最後まで観たらもう一度電話して。」

30分後、映画を観終えて、再度ひろに電話した。
「終わった・・・悲しかった・・・」
「そう、何を観てたの?」
「『愛を読む人』。何とも言えない、重い映画だった。
ひろは今、何してるの?」
「マッサージチェアに乗ってた。」
「もう寝る?」
「もう寝る。」
「おやすみ。また電話してね。」
「おやすみ。また電話するよ。」

土曜日の朝、今日はひろと会えないんだし、
ゆっくり起きようと思っていた。
何度寝もしたけれど、9時半が限界。
起き上がって、洗濯を始めた。
ずっと洗っていなかったシーツやベッドカバーも外す。
ついでに、部屋も掃除をし始めた。

午前11時過ぎ、電話が鳴った。
今日、お葬式に参列すると言っていたひろからだった。
「もしもし?どうしたの?」

お葬式に行くのに、姫の車を出したほうがいいか、木曜日のうちに
聞いていた。答えは「大丈夫」だった。
だから、ひろから電話がかかってきたのは、ちょっと不思議だった。

「電話するね、って言ったから掛けてみたじゃん!」
「そうか、そうか。嬉しい!ありがと。」
「今何してる?」
「今ね、洗濯してる。お部屋の掃除もしてるんだよ!」
「えらい!!・・・」
「ありがと。」
「じゃあ、頑張りましょう!君も頑張って。」
「うん。また電話して。」
「ホント?また電話していい?」
「いつでも。待ってる。」
「じゃあね。」
「じゃあね。」

これが、ひろとの最後の会話。
何か言いたげだったような気がする。

”お葬式送って行ってあげるよ!”
そう言ってあげれば良かった。

そうしたらひろは拒んだだろうか。
ひろの病気について、改めて説明するのも
大変なので、別ブログに記していた記事を転載します。


(2012年6月4日付の記事)

金曜日、思っていた以上に仕事が早く終わった。
午後1時40分ごろ、ひろに電話する。
「もう仕事終わったんだよ!」
「・・・そうか・・・僕、まだお店だよ。」
「寝てた?!」
「うん」
「ごめん・・・邪魔しちゃって・・・」
「いいよ。迎えに来てくれる?」
「うん!」

ひろを迎えに行き、ホテルCに行った。
車を止め、エントランスに向かうと突然、
ひろが姫の手を取った。
どこで誰が見ているか分からない。特に昼間だと・・・
ひろが姫を手を握ってくるのは、とにかく珍しかった。
エントランスに近づくと、こちらに向かってくる男性に
ひろが目を留めた。「T君だ・・・」

つないだ手をさっと振り解こうとすると、
逆にひろはしっかり手を握りなおした。
握ったまま、そのT氏と立ち話をした。
高校の同級生らしく、今はオペラ歌手をされているという。

ティールームでお茶を飲んだ。
ベンチシートに並び、ひろは姫に密着する。
「僕たちイチャイチャしてるね。」
ひろは嬉しそうだ。

しばらくして、ひろが言った。
「さぁ、行こう・・・車に。」

地下駐車場に止めた車の中で、
姫はひろに向かって腕を広げた。
ひろは姫を抱きとめ、そしてキスをした。
混ざり合うようなキスだった。
「大好きだ・・・いい女だ、君は。中に入れたい?」
「うん。」
「またしようね。お風呂も一緒に入ろうね。
お風呂で後ろからするのも好き?感じる?」
「うん。」
「硬くなってきた・・・」

コットンパンツの上からはっきりと形が
浮き出たものを優しく触った。
「ギュッと握って。」
だから強く握った。

もう一度キスをして、車を出した。
「日向ぼっこしようかな・・・」
そう言いながら、ひろはジッパーを下ろし
硬くなったものを露にした。
「やらしい・・・」
「触って」
本当は口を付けたかったが、指先で先端を優しくなぞった。
「上手だ・・・あぁ・・・気持ちいい・・・」
「気持ちいい?」
「うん。強く握って。」
「どうして?」
「手に感触が残るように。」
言われるままに強く握り、そのまま手を上下させた。
「ダメダメ・・・もうお店に着いちゃう・・・」
「ケチ!」
「バカ!もうお店にスタッフいるんだから。
こんなに硬くなっちゃって。」
「アハハ・・・」
「明日しよう!」
「明日?明日はお葬式でしょ?」
「じゃあな!また電話する。」
「じゃあね。電話して!」

ひろはとても穏やかで、とても優しかった。
姫を見つめる目も、言葉も、
キスの仕方も全部優しかった。

これがひろと会った最後だ。