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姫日記

恋する気持ちを持ち続けていたい姫の日記です。

ひろが入院して2週間。

当初は10日~2週間と言われていて、本当は
昨日の月曜日に退院するはずだった・・・

が、しかし、色々なことが万全ではなく
日常生活を送るには不安が残るということで
退院はまだ、もう少し先になりそうだ。

仕事、家事、病院と毎日をせわしなく
送っているせいか、ここのところ
疲れが尋常でない。

何もやる気が起きないし、
明るい気分にもなれない。

不安ばかりが頭をよぎって、ついイライラしている。


器が小さい人間だな・・・
と、つくづく自己嫌悪に陥る。
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ひろは面倒な人だ。
単純なくせに、自分を複雑怪奇だと思うフシがある。

そういうことがあるたび、姫はひろを諭す。
以前は、諭されるや否や不機嫌になり
俺様スイッチが入ることが多かった。

今日もまた、ひろは面倒なことをするので
言葉を選び選び諭した。
一応、言い訳をしておこうと思って、こう言った。
「あのね、姫はね、理想の男像というものがあって、
それにひろを当てはめようなんて思ってるわけじゃないの。
そんな滅相もない。そういう訳じゃないからね。」

すると、ひろは大袈裟に言った。
「え?!お前が理想の男像なんて持ってるの?!」

「あるよ~」

「どんな?!」

「ん~とねぇ、基本穏やかで、姫の言うことを
何でも静かに聞いてくれるんだけど、
姫のワガママが過ぎると、『いい加減にしろ!
ツベコベ言ってないで黙って俺について来い!!』
って言うような人!!そう言われたら、たちまち
『ハイっ!』って聞いちゃう。」


「それって俺のことか?!」

「全然。」



ひろは姫の理想の男像とは程遠い。
なのに、どうしてこんなに好きなのか。
今日は急いで仕事に行く必要がなく
朝はのんびりベッドでまどろんでいた。

午前9時過ぎ、枕元の電話が鳴った。
ひろからだ。

「今、話しても大丈夫?」と、ひろ。

「っていうか、まだ寝てた。」

「ごめん・・・」

「いいの。どうしたの?」

「僕ね、もう何食べてもいいって。
それに、外出してもいいって。」

「そう!それは良かった。」

「市役所に行こうと思って。」

「連れて行ってあげようか?」

「いいの?そうしてくれるとうんと嬉しい。」


というわけでお化粧をして、用事を済ませ
ひろの元に向かった。

「今日は君と昼ご飯食べる!」

ひろは嬉しそうだ。

市役所には病院に提出する書類を取りに来た。
ひろは時々やってくる痛みをこらえながら歩く。
姫はひろを支えているので、まるで介護だ。

市役所を出て、すぐ隣にあるホテルCでランチ。
ひろは思案した挙句、中華粥にした。
『何でも食べてもいい』と言われたものの
やっぱり不安だったのだろう。


食事を終えて、ティールームに移動すると
ひろはすかさず言った。
「僕、モンブラン食べる!」

・・・中華粥にした意味はあるのか?!
2日ほど前、元カレからメールが届いた。
時刻はもう深夜0時になる頃だ。

『夜分にすみません。仕事のお休みは何曜日ですか?
日帰りで会いに行ってもいいですか?』

唐突な内容で、正直驚いた。
大学時代の4年間付き合っていた元カレ。
一昨年のあの事件の後、傷心を癒やしたくて
元カレと20年ぶりに会った。
それ以来、会ってもいないし、メールのやり取り程度だ。
クリスマス、新年の挨拶、そして姫の誕生日。
誕生日は忘れていないのか、毎年必ず「おめでとう」の
メッセージが届く。


『お久しぶり。どうかしましたか?
仕事はまちまちなので、直前にでも連絡下さい。』
姫は、そう返事した。
内心、メンドウだな・・・と思いながら。


『何かあった訳じゃないけど、懐かしくなって。』


『懐かしがってくれてありがとう。』


『今もそうだけど、飲むと無性に会いたくなる。
僕の青春の全てだから。』


『光栄です。ありがとう』


『22年も経ってるけど、ずっとダイスキ』



・・・う~ん。
これはとても有難いこと。


元カレと結婚していたら、どうなっていただろう。


なんか、何もかも上手く行かないんだよ、私の人生・・・
毎日、ひろの元に通っている。
日に日に回復はしているけれど、退院はもう少し先になりそうだ。
病室に着くなり、ひろはアレコレと姫に言いつける。待ってましたとばかりに・・・
「売店でアレ買ってきて」、「看護婦に聞いてきて」・・・

今日も、午後早い時間に病院に到着。
しばらくして眠るひろの横にそっと添い寝をしていた。
すると、スーッとドアの開く音がして起き上がると、お兄様の姿が。
「あ、こんにちは・・・」
「いいよ、いいよ、寝てな。」

まずいところを見られちゃったなぁと思いながら、
眠るひろのそばで、お兄様とひろの状態について話をした。

お兄様は長年銀行に勤め、現在も社会的な地位を保っている立派な方だ。
そういう社会性でいえば、ひろとは真逆の人生を送っている。
熟年離婚をされてはいるが、娘や息子たちとの関係は良好そうで、
悠々自適な生活をされているのがよく分かる。

そのお兄様の趣味は家庭菜園だそうで、ひろのお店の野菜は
旬のものであれば殆どがお兄様作のものであるようだ。

「今は、ブロッコリーがたくさん採れる。」

「いいですね~。」

「今から一緒に畑行く?!」

「え~、寒いじゃないですか・・・」←これは一応、上手くかわしたつもり。

「これからインゲンをまくんだ。うまいんだよ、インゲン。」

「美味しそう!私はチラシ寿司に混ぜ込みます。斜めに細く切ったものを。」

「あ~、旨いなぁ。へぇ~、一人なのにチラシ寿司なんて作るの?」



・・・・そうなのだ。
お兄様は姫の素性を知らない。知っているのは勤め先と、年齢くらいだ。
まさか、自分の弟、しかもバツ2でヤンチャばかりしてきた
どうしようもない弟が”恋人”と称する女性が夫も子どももいるなんて
思いも寄らないだろう。


そう思うと、途端にお兄様に対して顔向けが出来なくなった。
その場は何とかやり過ごすことはできたけれど、
この先、お兄様に会うのがはばかられる。

姫の行いは、そのままひろの行いとなって
周囲から非難されるに違いない。
それが心苦しい。

罪悪感のような複雑な気持ちでいっぱいだ。


ひろにそのことを話したいけれど、できない。
一番、相談したい人に相談できない。


私がしていることは罪悪なのか。

うつらうつら眠るひろの身体をさすった。
ふくらはぎを強く指圧すると気持ち良いのか、口元に笑みが浮かぶ。

「幸せ・・・」
ひろはウットリと姫の腕をつかんで引き寄せた。
「僕、幸せだよ。ありがとう。こんな僕に君はどうしてそんなに
優しくしてくれるの?」

「何でかな・・・」

「このご恩は忘れないからね。」

「分かんないよ。喉元過ぎれば・・・だから!」

「僕はそんな人非人じゃない。」



今、病室のベッドの上ではあるけれど、
姫も今、この瞬間が幸せだよ。
手術から一夜明けて、ひろは痛々しい。
発熱もあり、寝たきりだ。

今朝、回復室から一般病棟に移ったひろを訪ね、無事を確認した。
前回の手術の時とは比較にならないほどの元気さで一安心。
一時間ほどして姫は仕事に戻った。
「遅くなるかもだけど、また来るから」

ひろは夢うつつの様子で眠った。

意外に仕事が早く片付き、再びひろを訪ねると
力なく眠っている。

痛い、身体が熱いと訴えるひろ。
脚を触ると、甘えたように「もっと・・・」と言う。

苦痛で眉間にシワを寄せ、弱音を吐く。
「身体の一部分を切り取ったんだから、影響があるに決まってるし、
理由がわかる痛さなんだから、不安になることないんだよ!」
姫がそう言うと、ひろは神妙な顔で言った。
「僕が今、何が一番不安か分かる?」

「なあに?」

「君が帰っちゃうこと。もう帰っちゃうのかと。」

「アハハ・・・大丈夫。まだ帰んないよ。」

「ホント!?良かった・・・」
ひろはニッコリと微笑んで姫の身体に触れた。
予定通り2時間を少し過ぎた頃、ひろの手術が終わった。
お兄様と待合室でポツリポツリと話をする時間の何と長かったことか。

待合室に看護婦さんが来て面談室に呼ばれ、そこでひろの主治医から説明があった。
「出血も大したことないし、まぁ問題ないです」
手術の内容の説明、今後の経過予想の説明があり
ひろの身体から切り取った部分を見せられた。

すご過ぎる・・・・

しばらくして、麻酔から覚めないままの朦朧としたひろの元に行った。

そう言えば、面談室に入る前に看護婦さんが聞いた。
「患者さんとの関係を言ってください。」

お兄様は「僕は兄です」と、当然答える。
姫は「あ、私は・・・」と、躊躇した。
答えようがない。

すると、お兄様は「この人は、内縁の妻。」と答えてくれた。
『内縁の妻』・・・


そうそう、ひろはあちこちに管が通され、目を瞑ってベッドで寝ていた。
ほんのうっすら目を開け。お兄様と姫のことは確認したようだ。
少しそばにいて、「オヤスミ」と姫。
お兄様は「じゃあ、何か旨いものでも食いに行ってくるよ」と、言い残し
二人で回復室を出た。

地下駐車場に向かいながら「晩飯食いに行こう」と、姫を誘って下さり
遠慮したものの、結局お兄様に従った。
「お気遣いありがとうございます・・・」と。

ひろのことや色々な話をした数時間だった。


姫が既婚者で子供がいることは、やっぱり知らないようだった。
言えないよ、さすがに・・・
今、ひろが手術室に入った。

だから、一人で待合室で待っている。
もうすぐしたら、お兄様がやって来るだろう。

一時間ほどで手術は終わるんじゃないかと予想している。
手術が終わったら、主治医から説明があり、
麻酔から覚めたひろと面会が許される。

夏の手術は8時間に及んだので、今回の手術はそれと比べると
随分と簡単な手術なのかもしれない。

けれど、全身麻酔であることに変わりはないので
不安がないわけではない。
手術室前でバイバイと手を振ったのが、最期の・・・
なんてこともあるかもしれないから。

また、ひろに会えるまで、ちょっとだけ待つ。
貴重品をしまったロッカーの鍵も、ひろの携帯も姫が預かっているのだから。
今日、ひろに付き添って病院に行った。
去年の夏に手術を受けて、半年後、もう一度手術を受ける予定になっている。

その再手術のための検査が先週、先々週と続いていた。
検査結果には何ら問題はなく、
そして・・・今日手術の日程が決まった。

「28日にしましょう。」と主治医。

「え・・・もっと早くしてください。」

「う~ん・・・今週来週とバタバタでオペ室も詰まってるんです。
ホント、ごめんなさい・・・」

「ちょっと先生が飲む時間を遅くしてもらえたら・・・」と、ひろ。

そう、ひろの主治医はひろのお店のお客様でもあり、
ちょうど昨夜も外科の先生方の宴会があったばかりだった。

「そういうわけじゃないんですよ~ホント。あ、昨日は夜中の3時でした。
・・・う~ん、どうしようかなぁ。すごい遅い時間のオペになっちゃうんです。」

「いいです!遅い時間でも。」

「いやいや、そういうわけにもいかなくて。オペ室の看護婦のこともあるんで。」


そんな問答が続いて、結局、ひろのワガママが通る形で決着した。
「じゃあ、13日に手術しましょう。前日入院。今から手続きして。」

つまり、連休明けに入院、翌日手術ということが急遽決まった。
これから大忙しだ。

ということで、そんな準備もあり、姫は明日からお部屋に行くことにした。
『お部屋』とは、ひろが借りてくれているアパートのこと。
そこで、ひろと過ごし、入院の準備を整える。
火曜日の入院も、水曜日の手術も姫の付き添いが必要だ。

ちょっとバタバタとするかな・・・
10年ほど前 ひろと出会った。

2月早春の頃だったと思う。
長い付き合いの女友達Aちゃんと夜、食事をした。
彼女とは お酒を飲みに行ったり 食事をしたり、愚痴を聞いたり、
お互いを慰めあったりする仲だ。

ビストロでの軽い食事の後、彼女行きつけのバーCへ行こうということになった。
Cが入るビルの前で 彼女が声を上げた
「Sさん!!」


初めて、ひろと出会った瞬間だ。

「今、Cで飲んでた。どこ行くの?」と、ひろ。

「今から彼女と二人でCに行こうかと思って。Sさんは休みなの?」

「いや、休みじゃないけど。たまには。じゃ、Cに一緒に行こう。」

姫はAちゃんとひろが話をするのをじっと見ていた。
(素敵な人だな。)と思ったような気がする。
あとから考えたら、その時すでに、恋に落ちていた。

Cはほの暗い照明で大人の雰囲気のバー。
カウンターの奥にAちゃん、ひろ、姫の順で座った。
簡単に自己紹介的な会話をする。

ひろがダイニングバーのオーナーであること。
既婚者であること。50を過ぎたところであること。
今まで経験した仕事のこと。

姫も自分の話をする。既婚者であること、年齢。
子どもが二人居ること、仕事のこと、色々。

Aちゃんを交えて他愛ない会話をしながら、ひろに惹かれてゆく自分がいた。

Aちゃんに促されて ひろと携帯番号の交換をする。
ひろが老眼鏡を取り出す。ポケットから照れながら。
「これかけないと見えないんだよ。100円ショップのもの。」

2時間くらいCに居ただろうか。
Cのマスターも交えて 他のお店で飲むことになった。
Aちゃんを置いて、先にひろと姫がCを出ることになった。

ビルの外。寒い夜風が吹く。約束のお店まで少し歩く。
ひろが手をつないできた。
「こんなふうに手をつないだのは学生の時以来だ」

足早に歩きながら どんな会話をしたろう。すでにすっかり恋に落ちていた。
全てが姫の好みだったのだと思う。
優しげな目。洒脱な会話。大人な雰囲気。
色気のあるしぐさ。女性の扱い。
軽そうに見えて、控えめで気遣いのできるところ。
性急なところはなく、下品でもない。だから安心できた。

約束の店に着きAちゃんたちを待つ。
Aちゃんたちが到着してひとまず4人で乾杯した。
他愛ない会話。姫は 初めての雰囲気に気後れする。
盛り上がる場に入っていくのは苦手だ。

ひろが言う「ここは明る過ぎるなぁ。もっと暗い店はないの?」

「じゃあ、二人でそこに行こう!」
ひろに促されて、二人で店を出た。

Yの入ったビルを確かめたあと、ひろが言う
「僕のお店はあそこだよ。ちょっとだけ行ってくるから
君は先に入ってて。この上だから。行ける?大丈夫?」

「うん。」
一人で階段を上る。木のドアを開けると、店内は真っ暗闇。
手探りで カウンターに腰掛ける。
小さなろうそくの灯りの中、一人でドキドキしながらひろを待った。

ほんの数分経ったころ、ひろが来る。息を切らして。
「お嬢さん、お一人ですか?」

「はい。」

「ご一緒していいですか?」

「ええ。」

「接吻したくなった。」
そして、ひろに抱きすくめられた。
されるがままじっとしていると、ひろが顔を寄せキスをした。
舌を絡め、ひろの手が姫の背中を這う。
姫もひろの背中に腕を回して、きつく抱きしめた。
ひろの髪に指を滑らせ、柔らかな髪に指を絡めた。

姫のこと、ひろのこと色々な話をする。
ひろが言う「僕は君の愛人にはぴったりだ。」

「僕たちはもう遺伝子を残さなくてもいいし、僕は後腐れがない男だ。」
とにかく姫にアプローチしてきた。

カウンターに並んで座っていると、
姫の手を取って、ひろは自分のものへ導いた。
導かれるまま、優しく、強く触った。

ひろも姫を触り、首元から胸元へ手を滑り込ませる。
ひろはシーンズのジッパーを下ろすと、さらに姫の手を導いて握らせた。


ひろとの交歓は心地いい。こんな気分になったのは久しぶりだった。
子どもを産んで女としてもう終わったような気がしていたからだ。
もう誰とも恋をしないと思ったし、まして性的な喜びを感じることなんてないと思ってた。

トイレに行こうと席を立った姫は身体の芯が熱くなっていた。
姫は濡れていた、とても。

もう濡れることもないと思っていた。
子どもを産んだら、そうなるのだと思ってたのだ。
だから、とても嬉しかった。まだ終わっていないのだと思って。
まだ濡れるような身体なんだという喜びに、うっとりした。

席に戻ると、ひろが言った。もう既にかなり遅い時間だ。
「今日は挿入はしない。さぁ 帰るぞ!!送ってく。」

ひろとタクシーに乗った。
「明日必ず電話する。」
「うん。」

そんなふうに、ひろと出会った。
今まで旧サークルプレイヤーを使って書いていましたが、
どうも使いにくくてしょうがないので・・・

まだここにも慣れませんが、のんびり書いてゆきます。