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姫日記

恋する気持ちを持ち続けていたい姫の日記です。

私が住む地域では
とうもろこしが盛んに作られている。
甘い甘い品種で、この時期は郊外に行くと
あちこちにのぼりが立つ。
時期が限られているからか、
旬を逃すまいと直売所には行列ができたり、
予約で売り切れだったりと、
産地なのに簡単には手に入らない。

とうもろこしは鮮度が落ちるのが早く、
収穫後から甘みも落ちていくという。
だからこそ、大都市には
こんなに甘いとうもろこしがないのだろう。
大阪の妹に送ると、
「めちゃ甘くて、ほかのは食べられないわぁ」
と、とにかく喜ばれる。

でもって、Nちゃんはとうもろこしが大好きだ。
今月初めのことだったか、
たまたま仕事で出かけた先で
採れたてのとうもろこしが売っていたので、
4本入りを二袋買った。
少し小さめのB品だったが、自宅用なら十分だ。
Nちゃんがもし取りに来るならあげようと、
迷いつつ二袋買った。

なぜ迷うかと言うと、
「取りに来る」だけでは済まず、
晩ご飯のことを考えなくてはならない。
たった数百円のとうもろこしと引き換えに、
外食に行けば数千円を彼に使わせることになる。

かと言って、
「うちでご飯食べる?」ということにすると、
当然私が作らなきゃいけないので、面倒だ。

う~ん、どうしよう…と考えていたが、
その日の昼過ぎの彼からのメールに勢いで

「○○でとうもろこし買ったよ。
二袋買ったから欲しい?取りに来る?」
と返した。

「欲しい!」
即レスがあり、

「じゃあ、ご飯作るね。簡単なものだけど。」
と、これまた勢いで送った。

彼に美味しいとうもろこしをあげて
喜んでもらいたいのと、
彼に会えるという一石二鳥の嬉しさが、
晩ご飯を作る面倒さを上回った。

まぁ、こんなことを言えるのは、
私が一人暮らしをしているから。
なんと贅沢な思考回路か。


そして、その翌々日、
仕事上でまたまたとうもろこしをいただいた。
このとうもろこしは贈答用の立派なもの。
しかも地域で一番有名なファームのものだ。
そんなブランドとうもろこしを6本ももらった。

「◆◆のとうもろこしもらったよ!」

「でかした!」

「取りに来る?」

瞬発的に聞いてしまった。
二日前にとうもろこしを理由に
一緒に晩ご飯を食べたばかりだ。

「はぁい!」

また晩ご飯作ればいっか・・・
そう思っていたら、夕方
「晩ご飯はどうする?」とメールが来た。

「うちで作ってもいいし、どっちでも」

「食べに行こうか」
彼もそれなりに気を遣ったのかもしれない。


そんなわけで、とうもろこしを理由に
平日の夜、2回もNちゃんと会ったのだ。


なんだ、意外に簡単に会えるんだな…
言ってみるもんだ、とは思ったが、
あんまり頻繁だと
それはそれで良いことはないので、
今回ばかりは、
とうもろこしのせいだということにしておこう。



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「もうすぐ到着」

ぶっきらぼうな電話のほんの1分後、
Nちゃんの車が家の前に停まった。

「何食べる?」

「うーん、、何か候補挙げて」

「いつもオレが決めてるんだから、
たまには姫ちゃんが決めて」


何もそんな言い方をしなくても、
というぶっきらぼうな言い方に
私は少し傷付いている。


だからと言って機嫌が悪いわけでもない。

その証拠に、
信号待ちで停まったタイミングで、
Nちゃんは手を伸ばして私の脚を撫であげた。

彼はストッキングフェチなのだ。

「好き?」

「うん」

「ストッキングを履いた脚が?」

「うん」

「私の脚じゃなくても?」

「ストッキングを履いた姫ちゃんの脚が」

「ほんと?」

「ほんとに決まってる」

「気持ちいい?」

「手触りは気持ちいいけど、フィット感がイマイチ」

「は?どういうこと?」

「もっとフィットしててツヤツヤしてて欲しい」

「フィットっていうのは、私の感覚じゃないの?」

「いや、オレ的に」

「履くのは私なんだからさ」

「いや、ご主人さまのために、ご主人さまが気に入るものを履かないと」

「なんだそれ、、
そんなこと言ってたら嫌われるよ」

「ならないから大丈夫」

「そんなの分かんないじゃん」

「大丈夫だよ。
好きで好きでたまらないんだから。」

「誰が?」

「姫ちゃんがオレを」



ここまで言われる私。
しょうがない、惚れた弱みだ。

日に日に事態が深刻化して落ち着かないですね。
皆さん、お変わりないですか?

**********************

日常にもコロナ禍が刻一刻と迫っている。
仕事にも影響が広範囲に出て、
在宅勤務の指示も出た。

なかなかすぐに在宅勤務に切り替えられないが。

息子の帰省も断った。
大学も研究室も休みで気が狂いそうとのことだが、
これも仕方ない。
可哀想だけれども。


彼とは変わらず逢っている。
今のところ。

ただ、一緒にお出掛けしたり、
外にご飯を食べに行くのが憚られ、
私の家でずっと過ごしている。

平日の夜もおうちご飯。
週末の昼から夜の長い時間も、ずっとおうち。
私の家という拠点があって良かった。
拠点がなければ、逢うのも難しかっただろう。 
そのことは考えたくない。

とにかく、彼とは変わりなく過ごしている。

彼は今日から勤務体制が変わり、
週の半分は隔日で在宅勤務となった。
在宅勤務と言っても、ほぼ仕事にならず、
実質「休み」みたいなものだ。

私は今日の午前中は雨も酷かったので、
遅い時間に家を出た。
どうせ在宅勤務の指示が出てるし、
急いでオフィスに行く必要もない。

彼は今日は在宅の日。

昼過ぎにメールが来た。
「お昼だよ、姫ちゃん!
オレはキッチン掃除してる」

暢気なメールだ。



が、私の気持ちは複雑だ。
「キッチン掃除か…」
そこまで家事を請け負っている彼に
何とも言えない気持ちになった。

彼は虚しくないのか、とか、
彼が家事をどれだけ完璧にやろうと、
私は何の恩恵も受けない。
どうでもいいのだ。


それに、きっと、
他にやることもなく、気になったから
キッチン掃除をしたのだろう。


なんともったいない…

もし私が一緒にいれば、
そんなことはせず、もっともっと楽しいことをしただろう。

いや、家事でさえ、
二人ですれば楽しいだろう。


思いがけずふってわいたような、
この「休みみたいな」時間。
…私は仕事だけど。


さっき、そのことを彼にメールした。

「お疲れさま」

「うん、Nちゃんもお疲れさま」

「ありがとう。オレはずっと換気扇掃除してたよ」

「そっか…えらいねぇ」

「他にやることないから」

「そっかぁ…
一緒にいたら、もっと楽しいこといっぱいできるのにね!」

「一応、勤務だからさ…」

「ううん、そうじゃなくて。
仮に、私とNちゃんが同じ家に暮らしていたら、
もっと楽しいのにな、って。」

「うん、そうだね。何して過ごす?」

「掃除でもいいし、ご飯一緒に作ってもいいし、
テレビでも映画でも、何しても楽しいよ。」

「うん、そだね」

「Nちゃんは何したい?」

「人生ゲームとか!」

「昭和だね…」

「将棋とかオセロとか」

「うん、一緒にいたら何でも楽しいね、きっと。
だからね、もったいないなぁ、って思ったの。
せっかく楽しいことができるのに、離れ離れで、
叶わなくて、だからもったいない、って。」

「うん…もったいないね」


彼にも私の「もったいない」が通じた。
それが嬉しくて、涙が出た。


「仕方ないにゃ」

「うん、分かってる。
ただ、そんなことを思っただけ」

「うんうん」



1月に受けた健康診断で要精密検査の結果が出た。
子宮頸がん検診で引っかかったのだ。

先月その精密検査を受け、夜にNちゃんと会った。
帰り際、車の中で彼が言った。
「ちゃんと診てもらって元気でいてね。
オレより先に死んだら困る。」

「え?どういうこと?私が先に死にたいよ。」

「姫ちゃんが先に死んだら、オレは誰が看取ってくれるのさ?」

「そうだけど・・・」

「オレが死んだちょっと後で死んで」


生死に関わるナイーブな話かもしれないが、
私はその時、ちょっぴり嬉しかった。

愛する人を看取るのと、
愛する人に看取られるのと、
どちらが幸せなんだろう。

どちらかは分からないが、
とにかく私は、ちょっぴり嬉しかった。
少し前にNちゃんが言った。
「18日、イベントがあるから仕事だよ。
姫ちゃん来る?」

「えー、、何しに?」

「オレを見に!」

Nちゃんの職場で恒例のイベントらしく、
でも、それは私には全く興味のないもので…
でも、「オレを見に!」と言ってくれたのが
嬉しくて、すぐに友達を誘った。

どちらかというと男性ばかりのイベントだろうし、
女一人で行くのは到底考えられなかった。
なので、まぁ、せめて二人なら、
その場の雰囲気にも耐えられるかと思ったのだ。

お互いの秘密を共有し合う友達。
私の誘いに即答して快諾してくれた。
「行こ行こ!」と。


イベント前日、私のグズグズでNちゃんとの
雲行きが怪しくなり、私は、直前まで、
行くのを躊躇っていた。
「行くって言ってるんだから、行かなきゃダメ」
と、友人に背中を押され、会場に向かった。

どこにいるんだろう…とキョロキョロしていると、
あ!いた!
私を見つけてくれた様子の彼が見えた。

私にとっては完全アウェイなのもあって、
一気に恥ずかしさが込み上げてきた。

前日、あんなに、グズグズしてたのに。
そんなことは一瞬でチャラになった。

Nちゃんの元に歩み寄って、すぐ友人を紹介した。

「はじめまして」
彼は被っていた帽子を取り、丁寧にお辞儀をした。

「ねぇ、ねぇ、何見たらいい?」
そう尋ねて、彼にアドバイスを求めた。

一通り巡って、再びNちゃんの元へ行き、
他愛ない話をした。

すると、Nちゃんは、私の髪に何かが付いていると
指摘しながら、私の髪を触った。
たくさんの人のいる前で。
友人のいる前で。

私は、内心ドキドキしたが、
そのことは1ミリも表に出さず、会話を続けた。

客観的にそれがどう映るか。
特別な関係だということは誰にでも分かるはずだ。

それでも、尚、Nちゃんがそうしたのは、
「オレの女だぞ」というアピールか。


Nちゃんは私に対して、躊躇なく愛情表現をする。
後ろから覆い被さってきたり、
横に並んで歩いていると、ギューっと
肩を抱き寄せてきたり、
階段の踊り場で急に振り向いてハグをしてきたり、
でも、それは、二人だけの時。


こんな誇示するような行動は初めてだった。
しかも、Nちゃんの職場で、だ。


気恥ずかしいような、くすぐったいような、
そんな感覚。

まぁ、オジさんとオバさんのこんな光景、
誰も気に留めないだろうけれど。