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姫日記

恋する気持ちを持ち続けていたい姫の日記です。

そんな言い方しなくてもいいのに。


いつも、あとからそう思う。
その時は、感情を抑えるのに必死で、
冷静ではないのだろう。


Nちゃんはいつもそうだ。
いつもそう。

ああ言えばこう言う、
肯定なんてしない、
同意もしない、
皮肉で返す、

いつもそう。


つい先日のこと。
大学4年の息子が大学院の試験を受けるのに
「スーツを送って欲しい、靴も」
と連絡を寄越した。

部屋も狭いし、管理も出来ないだろうし、
何よりスーツなんて着る機会はないから、
私が預かって管理していたのだ。


スーツを送るのに段ボール箱が必要で
Nちゃんにホームセンターに寄ってもらった。

「スーツを送って、って連絡が来てさ…」

「そんなの買え、って言えばいいじゃん」

「え?だって、あるのにもったいないでしょ?
管理できないから私が預かってるだけだし。
カビはやしたりしたら困るもん」

「もうカビ生えてるかもよ」

「…そんなわけないじゃん」

「買え、って言えばいいんだよ」

「まだ2、3回しか着てないのに」

「これを機会に買えばいいじゃん」




そんな言い方しなくてもいいのに。
私はただ「送るのが面倒だ」という気持ちに
同意してさえくれれば良かったのだ。

「面倒だね」って。


彼の物言いには悪意がこもっていた。
でも、その時には、
その場をやり過ごすことに精一杯で、
「そんな言い方しなくてもいいのに」
という言葉が思いつかなかった。

その場で言わなきゃ意味がないのに。




そして、こうも言った。

「入試があるんだよ。面接がね。」

「なんの?」

「大学院の」

「大学院に入試があるんだ?」

「うん、院試」

「へぇ…大学院なんて誰でも入れるんじゃないの?」

「え…まさか…」

「就職しない奴が行くとこでしょ?
だから希望したら入れるんじゃないの?」

「誰でも入れるなんて、あるわけないでしょ」




その時も、腹立ちと、驚きで呆気に取られて、
「そんな言い方しなくてもいいのに」
とは言えなかった。

悪意に満ちている気はしなかったが、
そこに私に対する、息子に対する敬意はなかった。


興味がなければ、
「へぇ、そうなんだね」
でいいじゃないか。

「そっか、そっか」
で、いいじゃないか。



Nちゃんはそういう人。
いつも。




そんな言い方しなくてもいいのに。

その思いが降り積もって、
今のグズグズ病に拍車をかけている。
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これはアリ、これはナシ、
これはOK、これはダメ、

彼の物差しで全ては決まる。


この物差しも、謎の一つだ。

彼とのデートで、彼が周囲を警戒することはない。
どこにだって出掛けるし、食事にも行く。
大型のショッピングモールにだって行くし、
映画も観に行く。

どこで誰が見ているか分からないのに。

そこを彼が警戒したり、
慎重に行動することはほぼない。


今は彼は、子供とも離れて暮らしているので、
自由度が高いからか、
一緒に過ごす時間も以前と比べて格段に長い。

私が一人暮らしをしているから、
というのもあるだろうが。


週末の土曜日か日曜日のどちらか一日は、
私との時間に充ててくれている。
お昼前にはうちに来て、昼下がりを過ごし、
私が作った晩ご飯を食べて20時ごろに帰る。

それが毎週だ。


「家庭内別居」でお互い干渉しないというが、
こんなに大胆な行動をどう思われているのだろう。


それほどまでに無関心な相手と
共に過ごしていることをどう思っているのだろう。


経済的に不自由なく、
生活に支障があれば問題ないのか。


私の妹は言う。
「お姉ちゃん、慰謝料とかそういうの気をつけて。訴えられないように」



その通りだ。


一枚も二枚も上手な相手なら、
軽々そんなこともやってのけるだろう。


自由度が大きい裏に、どんな代償があるのか…



それも彼の物差しで測られているのだろうか。






Nちゃんとのイザコザはその後も続いた。
しかも「姫ちゃん用」と、
写真を送ってくれたその日の夜にも
またムっとすることがあったのだ。

そんななかNちゃんは、2泊3日の人間ドックで
県外に出掛けた。
普段なら、おはように始まり、
帰るコールやおやすみなど、
一日に数十通のメールを欠かさないNちゃん。
けれども、私が返信をしないせいで、当然
彼からのメールはほとんど送られてこなかった。

それで、私は静かな時間を過ごしていた。
だから気持ちが落ち着いたのか、夜になって、
長文メールを送った。

『私が言ったこと、
ちゃんと理解してもらえましたか?
Nちゃんなりに考えて、私に接して
くれていることはいつも感謝しています。
いつもありがとう。
でもね、私を悲し くさせないで。
Nちゃんは私の生きるモチベーション。
言動一つが私にどれだけの影響を与えるか、
もっと考えてみて。
写真を送ってくれたこと、すごく嬉しかった。
「姫ちゃんの機嫌が少しでも良くなればと…」と、
自分の写真を送ってくるNちゃんを、
私は愛おしいと思ったよ。
屈託の無いNちゃんだからこそ、
私はNちゃんに惹かれるのだと。
でもね、屈託が無いのと、鈍感なのは、
紙一重だからね。そこを忘れないでいて。
帰ってくるのを待ってる。
帰ってきたら逢いに来て。おやすみ。』

メールを送ったのが深夜0時前だったからか、
返信はなく、
その代わり、翌朝、
にこやかな「おはよう」のメールがあった。

そして、人間ドック最後の日の朝、
「今夜、ご飯食べよう。」と送られてきた。

私はてっきり、一旦帰宅して
それで逢いに来てくれるのかと思ったら、
そのまま、私のもとに来た。
人間ドックから直帰するとは思わなかった。

高速を何時間も運転して疲れているだろうに・・・

迎えにきてくれたNちゃんは
私が誕生日に贈ったシャツを着ていた。
「シャツ、似合うね。すごく素敵」

「姫ちゃんに見せたくて。」

麻の長袖のシャツだったので、
真夏はなかなか着るチャンスがなかったのだろう。

絶対に似合うだろうけれど、
Nちゃんは買わないだろうとそのシャツを選んだ。
思ったとおり、とても似合っていて、素敵だった。

それで私は数日のイザコザのことなんて、
全部忘れた。
ここしばらくNちゃんとはイザコザしている。
言葉の行き違いだったり、些細なことで、
私がイラッと、カチンとなるからだ。

当のNちゃん本人は、悪気がないだけに、
結局、同じことを繰り返す。
何度繰り返しても、また、
私のカチンとスイッチを押す。

それで、
「ごめんなさい」と謝る。

「それだけ?」と返すと、
「申し訳ありませんでした」と来る。

はぁ…分かってないな。
Nちゃんが理解していないだけなのか、
男という生き物がそもそもそうなのか、
私には分からない。


そんな中、昨日の朝、
おはようのメールの後に、自撮りの写真が
送られてきた。
かすかに微笑むNちゃんの写真。

「これは何用?」
私がツレない返信をすると、

「姫ちゃん用\(^o^)/」
と返ってきた。


続けてこうも来た。
「姫ちゃんの機嫌が少しでも良くなればと
思って…」




フンっと、思いはしたが、
それでも…

私のために自撮りをし、
屈託無く「姫ちゃん用」と送るNちゃんを
私は好きだなと思った。

そういう屈託無いところに、
きっと私は惹かれているのだ。

カチンとさせることには
変わりないけれど。
Nちゃんは優しい人だ。
私には到底真似ができない優しさを持っている。

私のように意地を張ることもないし、
計算することもなく、
ただ真っ直ぐにその優しさを私に向ける。

そんなNちゃんが私は大好きだ。


先週、彼は出張で月曜日から木曜日まで
不在だった。

先週の土曜日、デートの時、
おもむろに彼は言った。
「俺、月曜日から出張。言ったっけ?」

「ううん、聞いてない。初耳。」

いつもそうだ。
教えてくれるのはいつも直前。
聞いたからと言って、何というわけではないが、
それでも、こちらに不在であることを教えるのは、
私は当たり前だと思っている。
だって、急に逢いたいと思っても
逢えないんだから。


そう、前にも話したつもりだったのに。

「いつ帰ってくるの?」

「木曜日の夜。」

「ふーん、、、」


話はそれで終わった。
彼が出張するからと言って、特段、
私には影響がないのだから。
あるとしたら、平日の夜、逢いたくても
逢えない、というだけのこと。
それだけのこと。


釈然としない気持ちは、心にしまった。



そして、出張中。
Nちゃんからは毎晩電話がかかってきた。
声をひそめる理由もないからか、
ただ遠いところにいる寂しさを埋めるためだけ
だからから、毎晩、電話があった。

水曜日の電話で、Nちゃんはこう言った。

「あ、俺、土曜日に富士山登ってくる。」

唐突に何気なく言ったので、
ひょっとして仕事かと思い、尋ねた。

「どうして?」

「部下が登るって言うから、一緒に登ろうって
話になったの。息子も連れて行こうかと思って。」

「そうなんだ…土曜日、◯◯に行きたかったのに」

「土曜日だっけ?日曜日に行けばいいじゃん」

「だって、土曜日にしか見れないもん」

「そっか、、また来るでしょ。」

私が見に行きたかったのは、特別な船の寄港。
数年ぶりに来るというので、しばらく前に、
「一緒にいこ!」と、彼に話していた。

それを忘れていたのは、仕方がない。
でも…
富士山の予定は急に決めたわけではないだろう。
何日も前から話が上がっていたはずだ。

それを、突然、
「俺、行くから」って。

話が上がった時点で、どうして私に言って
くれないのか。


そんな想いがフツフツと湧いてきて、
その日はローテンションのまま、電話を切った。
Nちゃんには、何も言わなかった。


翌日、私の家庭の中で、頭に来ることがあり、
怒りと苛立ちで、気持ちが昂ぶっていたところ、
Nちゃんから、「新幹線乗ったよ」だの、
「混んでて座れない」だの、呑気なメールが来た。


私の怒りと苛立ちは、Nちゃんに向けるべきでは
なかったけれど、つい、怒りに任せて、
吐き出した。


「すごく腹が立つことがありました。
いま、沸騰中です。
Nちゃんに頼りたいのに、頼れない。
そばに居てくれたらと思えば思うほど、
Nちゃんは遠い。

出張の予定も、富士山も、私はほんの
直前にしか知ることができない。
Nちゃんは遠い人。

悲しくて、辛い。
余裕がないから、一人にして。」


そんなメールを送ってしまった。



当然、彼から返事はない。
「一人にして」と言ったのだから。

随分、ひどい言い方をしてしまったが、
私は苛立っていた。

出張から帰って、
「お疲れさまでした」も言ってあげられなかった。


夜中に「おやすみなさい」と
遠慮がちなメールが届いたけれど、
何も返さなかったし、翌朝の
「おはよう。仕事頑張ってね」にも返さなかった。


金曜日の夜、
「気をつけて行ってらっしゃい。
無事に帰ってきてね」とメールをすると、

数時間して、
「明日は悪天候なので延期にしました」と
硬い返事がきた。

私は「そうでしたか」と送ったけれど、
それにも、
その後の「おやすみなさい」にも、
Nちゃんからの返信はなかった。


土曜日の朝、
10時を過ぎて、「おはよう」とメールした。

しばらくして「おはよう」と返事。


そっか、「おはよう」だけか。


きっと、Nちゃんは怒っているに違いない。
呆れているに違いない…

後悔は先に立たずだ。
酷い言い方をした私が悪い。
もっと、別の言い方をすれば良かった。
彼がくれたメールに返事をすればよかった。


あぁ、このまま、もう終わってしまうのか、
もうあの楽しい時間を過ごすことは出来ないのか、

自業自得か…


そう思っていると、電話が鳴った。

「姫ちゃん、体調はどう?」

「うん…まぁまぁ」

「◯◯に行こうか。」

「今から?」

「うん。11時くらいにそっちに行けるから。
支度できる?」

「うん。…ありがとう、Nちゃん」

「じゃあ、あとでね」



そして、Nちゃんは、
私が行きたいと言った◯◯に連れて行ってくれた。



私は思った。
この人はなんて優しいのだろう、
こんなに底のない優しさを持った人を
私は他に知らない。



だから、何度も、何度も、
ありがとう、と言った。